◆Two ページ6
なんというか、本当に貴女らしい別れ方だった。
だけれどこんな別れを迎えてしまうほどに酷くなっていた貴女のことをずっと気づけなかった私も、伝えてくれなかった貴女も馬鹿みたいに思えてくる。貴女が患っていたそれを、私なら取り除けていたのに。貴女が願っていた長い生も、私なら叶えてあげられたのに。彼女は一向に私のことを頼ってはくれなかった。
貴女から翼が生えてしまったあの日の喜びはなんだったのか。床に伏せたあの日から、段々と元気な姿を失っていったあの人の死ぬまでの言葉はなんだったのだろうか。死にたくないという怯えるような言葉か、それとも諦めか。とても忘れてはいけないものだった気がした。しかし、思い出すことは出来なかった。
一体貴女が私を拒んでまでそれによって倒れることを選んだのは、何故だったのか。私にとって病で床に伏せる貴女が亡くなってしまうことを受け入れるその様は、まるで自分を照らす一番星が堕ちる様なものと変わらなかった。
私は貴女を縛ることしか出来ない。貴女をあの箱庭から救うことは出来ても、貴女を正常な人間として送り出すことは出来なかった。
何故なら私は天使であり、恋をしてしまった罪人であったから。貴女に恋をしたのも、貴女に悪魔のような提案をしたのも、総ては大罪なのだから。そこに強制力はない。貴女が遠慮してしまえば、そこまで。それは最期も変わらず、貴女は遂に私を残して消えていってしまった。
そもそもどうして私は彼女に入れ込んでしまったのか。そう問われれば自分のことを崇める人間から貴女を逃がしたところからだろうか。私はただの偶像に過ぎず、消える意味はなかったのに彼女はあろう事か私まで解放した。天使も自由であるべき、そう彼女は言っていたが、その代償がこれなら私は自由など欲しくは無かった。なんて無慈悲な物語なのか。
やはり神様は私という天使のことですら監視しているらしい。自由になり、人を愛してしまった私の罪はもう隠してしまうことすら要らないのだろう。今更何か犯しても、それは罪の上塗りでしかない。
それならば、私は神の教えを放ってまでも貴女の事を待ち続けようか。
貴女がまた私と出会うその日まで、私はまた自分を苦しめ続ける。貴女が私を見つけるその時まで、私は白い翼のまま肺を止めて眠りにつこうか。
ホワイトマインド
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作者名:翠霞 | 作者ホームページ:https://twitter.com/Sui_Ka_zr
作成日時:2021年12月2日 21時