其処に愛は存在していた。【特殊短編集】 (ページ13)

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◆Five ページ13

世界は天使を淘汰していた。人間至上主義を目指して追いやった末は、天使の視認性の低下だった。そんな世界では、私達天使は皆何かしらの傷を抱えて生きている。知り合いで酷い例だと鬱だとか、軽くてもやはり心の臓にある見えないこころのようなものに、傷がついている。そんな天使に生きにくい社会では、天使のことが見える者を追い出すという考え方がないだけまだ良いのだろうと思うけれど。
しかし天使だって元々は人間社会に溶け込んでいた身。それ故に、天使らしい要素さえ隠してしまえばそれは人間として受け入れてもらえるという人間の変化に抗ったものとなっていた。

因みに神隠しは淘汰される前に愛していた人間を天使が連れ去る事象になっていた。そもそも天使とそれを視認できる人間というのは対となる存在であるという話があるらしい。酷く惹かれた人間と、前世からの深い縁があるのだとか。その縁が何なのかはもう知る由などないが。

私が彼女と出会ったのはとある春の日だった。その日は天使の姿で、大してゆくあてもなく歩いていたところで私は彼女に目を奪われた。それは彼女もある意味で同様だったのか、こちらを確実に見ているのが分かる驚きようだった。でも、これで私は一つ厄介な考えを手にしてしまった。

あの人、すごく欲しいな。

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