21話 〜××× End〜 no side ページ22
「ねえ敦君」
「はい?」
探偵社のオフィスで書類整理をしていた敦に、完全自○読本を読んでいた太宰が声をかける。
「望月Aちゃんという人は知っているかい?」
「望月、Aさん……知らないです。今回の依頼の関係者ですか?」
「いや、私の古い友人……片思いしていた相手だよ」
太宰の口から「片思い」という言葉が飛び出してきたことに、敦は目を丸くする。
「太宰さんにも、想いを伝えなかった人がいるんですね」
「伝える前に亡くなってしまったからね」
「そうなんですか、すみません……」
敦はそこで、根本的な疑問を口にする。
「なんでその人のことを僕に?」
「彼女、死ぬ間際に「あつし君に会いたかったな」と言ったのだよ。それが誰のことか気になってね」
「あつしなんて名前、別に珍しくもないですし、別の人じゃないですか?」
太宰は本を机において天井を仰ぐ。
「そうかなあ……あの娘の最期に「会いたかった」と言わせるなんて、どんな人なのだろうねぇ……嫉妬しちゃうなあ、全く」
それに、と太宰は続ける。
「包帯無駄遣い装置なんてあだ名、2人から言われるなんてね」
「その望月さんも、太宰さんのことをそう呼んだんですか?」
「そう。それも死ぬ直前に1回だけ。「あつし君」といい「包帯無駄遣い装置」といい、偶然とは思えないねぇ」
椅子にだらりと座り込む太宰。
「さっさと仕事をしろこの包帯無駄遣い装置が!」
「パース。新しい自○法を試してくるよ、手帳無駄遣い装置君」
「俺は無駄遣いではない!」
突っ込むところそこなの?と敦は思った。
ふと、太宰の机を見ると。
完全自○読本の上に、1枚の写真が置かれていた。
「この人が、望月さんなのかな……」
どこかの室内でカメラに向かって笑みを浮かべる1人の少女。照れているのか、頬が少し赤い。
裏返すと、付箋が貼ってあった。
そこに「敦君、彼女が望月Aちゃんだけど、本当に知らないかい?あと、惚れちゃ駄目だよ、彼女を想うのは私だけで十分!」と書かれてあった。
「僕がこれを裏返すことまでお見通しか……」
「敦ィ!お前も仕事をしろ!」
「はい!」
外に出た太宰は、とある墓地へ向かっていた。
「愛してる……Aちゃんに伝わったかなぁ」
fin.
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ああ - うーーん。 (1月13日 11時) (レス) @page24 id: b494e7f131 (このIDを非表示/違反報告)
lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - そうだったんですか!大丈夫ですいつでも面白い話待ってます! (2018年10月1日 17時) (レス) id: e8ca853bb3 (このIDを非表示/違反報告)
風寧 - サクラさん» 読んでいただいてありがとうございます。大変申し訳ありませんが、やつがれちゃんの方は諸事情により公開を一旦やめておりまして……すみません (2018年10月1日 17時) (レス) id: 19604f2ea5 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - いつも面白い小説見てます!あのやつがれちゃんで暗殺教室のパスワードがかかってて分からないんですが教えていただけませんでしょうか (2018年9月22日 0時) (レス) id: e8ca853bb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風寧 | 作成日時:2018年4月7日 16時