きゅっ ページ20
そして迎えた卒業式。
太一と約束なしでも会える、最後の日。
式は淡々と終了し、バレー部で色々やっているであろう太一のことを私は校門の前で待つ。
今日はいい天気。
桜がちらちらと舞っている。
春の陽気に眠たくなって、小さくあくびをすると後ろから聞き覚えのある声がした。
「Aさん」
この声は...。
私はゆっくりと後ろを振り返って一瞬びっくりした。
『白布くん?』
まさか話しかけてくるとは思ってもいなかった。
でもちょうどよかった。
白布くんに言わなければいけないことがある。
『あの、さ』
「はい」
『4年前の、豊黒中での事件。あれ、通報とかしてくれたの白布くんだよね』
彼の瞳が大きく揺らいだ。
『ほんっとにありがとう』
「...俺、ほんとはもっと早く言えればよかったんですけど...。ごめんなさい」
『ううん、そんなことないよ。ありがとう』
私の言葉に白布くんは少しだけ口角を上げて笑ってくれた。
白布くんも私の知らないところでいっぱい苦しんで、迷ってくれたんだろう。
本当に、感謝しかない。
「じゃあ俺そろそろ行きますね。太一がAさんのこと泣かせたら俺が殴っとくんで」
『あははっ!うん、ありがとう』
白布くんにめいいっぱいの力で手を振って彼の背中を見つめる。
...白布くん、ありがとう。
じゃり、と後ろから靴と地面が擦れる音が聞こえた。
「Aさん」
『太一!』
笑顔で後ろを振り返ると太一もいつもの笑顔で笑ってくれた。
「卒業、おめでとうごさいます」
『ありがとう』
「就職できました?」
『そりゃもちろん』
「遅くてもホワイトデーには絶対会いに行くんで」
『うん、ありがとう』
こんな普通の会話でさえも、明日からはできなくなってしまう。
...やばい、泣きそう。
でも”最後”は笑ってお別れをしなくては。
3ヶ月前、太一とした約束。
”付き合うのは私が卒業するまで”
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兎月うさぎ(プロフ) - みづさん» え〜!まじですか!めちゃくちゃ嬉しいです!その言葉だけでもう今日はいい日になりました笑 本当にありがとうございます! (2021年4月3日 6時) (レス) id: e0685c5060 (このIDを非表示/違反報告)
みづ(プロフ) - 私完全に兎月うさぎさんにハマってしまった…おもちゃ と 嘘と魔法が勘違い も何回も読み直してます!これからも応援してます! (2021年4月2日 18時) (レス) id: 96731072cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:兎月うさぎ | 作成日時:2021年3月31日 10時