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付き合う?
俺の疑問を感じ取ってか、彼女は「ちがうちがう」と微かに笑った。
『付き合うって彼氏彼女じゃないよ。私が死ぬまでにしたいことに付き合ってっていうお願い。』
”死ぬまでに彼女がしたいこと”
それは俺と一緒にやって楽しいものなのか。
だって彼女の周りにはいつも沢山の人がいる。
別に俺じゃなくても彼女のわがままに付き合ってくれる人は沢山いるのではないか。
京「それ、俺じゃない方がいいんじゃないの?」
『いや、私は赤葦くんがいい。』
どこから来るんだそんな思い。
でも断る権利も勇気もないようなもの。
『私も色々知ってくれてる人といる方が多分楽だし。...お願い!』
そう言ってぱちん、と手を合わせたAさん。
俺は彼女の遺書を読んでしまって、彼女が死のうとしていることを知ってしまった。
でもそれを知っているのは俺だけでほかの世界中のみんなは知らない。
”色々知ってくれてる楽な人”は世界中で俺ただひとり
それに俺には読んでしまったという不利な出来事がある。
京「無理のない範囲なら...。」
『!ほんと!?ありがと!』
ばっ、と顔を上げた彼女の笑顔はやっぱり向日葵のように真っ直ぐで純粋で、とてもあの遺書を書いた人物と同一だなんて思えなかった。
『よし、じゃあ明日の土曜部活ある?』
明日は丁度、体育館のメンテナンスが入っていて屋内でやる体育系の部活は全て休みだ。
京「明日はないよ。」
『おっけー。じゃ、明日1時に駅前ね!お昼ご飯食べてきたらダメだから!』
京「え、ちょ、まっ」
『どうしたの?用事あった?』
俺が一方的に立ち去ろうとする彼女を呼び止めるときょとんとした顔で彼女は振り向いた。
用事じゃない。
それよりも強引に予定をつけた彼女に驚いてしまっただけ。
『あ、連絡先交換しよ。迷子になったときのため。』
俺は、どうなるんだろう。
夏の魔物のせいとはこのことなのだろうか。
7月2日、金曜日
俺が彼女と関わりを持ってしまった日
俺の人生が変わった日
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作者名:兎月うさぎ | 作成日時:2021年2月19日 22時