嘘と魔法が勘違い【赤葦京治】 (ページ44)

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今日は主に観光がメインのプランだった。

動物園に海...他にもたくさんの場所に行った。

『新幹線、16時だからまだちょっと時間あるしブランコでも乗ろーよ。』

Aが公園のブランコを指さして子どもっぽく笑う。

”時間あるからブランコ乗ろう”

そのような発想は一切ない俺は思わず笑ってしまう。

公園の木には緑の葉が生い茂り、太陽の光を浴びてきらきらとしていた。

そしてどこからか蝉の鳴き声が聞こえる。

『ブランコなんて乗ったの中1以来ー！』

そう言いながら楽しそうにブランコを漕ぎ始めた彼女の隣のブランコに腰を掛ける。

京「俺は小学生以来かも。」

『確かに京治くんあんま乗らなさそう。』

彼女がブランコを漕ぐたび、ぎぃぎぃと金具が音を立てる。

『...なんか、帰っちゃうの寂しいねー。』

俺は思わずAをみる。

なぜか彼女は今にも消えてしまいそうだった。

京「...また、一緒に旅行すればいいよ。」

『え？』

ばっ、と勢いよくAは俺をみた。

その驚いた顔をみて、俺は我に返る。

...しまった。

”また”なんてAにはないのに。

Aに”また”を求めてはいけないのに。

でもAは声を上げて嬉しそうに笑った。

『京治くんにそう言ってもらえたら嬉しい。』

Aは「うん」なんて言わなかった。

肯定を期待していた。

肯定してほしかった。

京「...旅行、楽しかったよ。ありがとう。」

話題を変えたくて俺はAにお礼をした。

『！ほんと！？嬉しい！！私もめちゃくちゃ楽しかった！』

旅行に行く前とは何もかもが変わった。

いい意味でも、悪い意味でも。

でもこんなに楽しかった旅行は本当に久しぶりかもしれない。

聞こえていた蝉の鳴き声が止んだ。

俺とAの最初で最後の旅行はこうして幕を閉じた。