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『あ、そーゆーこと?京治くん教えんの上手だね。先生より分かりやすいよ。』
放課後、一緒に勉強するようになって3日目
テストまであと4日
Aは意外と理解するのが早くて俺が教えなくてもいいんじゃないかって思う。
でもAは俺に教えてほしいらしく、次々とわからない問題を聞いてくる。
俺も教えると勉強になるから全然いいんだけど。
京「またわかんないとこあったら聞いて。」
『はーい。』
図書室には俺とAと委員会の人しかいない。
しかも俺らが座っている席はカウンターからは見えないので実質2人きりと言っても過言ではない。
...割とほんとに。
ちらりと真剣な表情で教科書を見ているAを見る。
普段は見られないその表情に、俺の胸はどきんとはねた。
...あ、やばい。
どきんどきんとどんどん鼓動が早まってうるさい。
ぱちん、と顔をあげたAと目が合った。
『...照れるからやめてよ。』
京「...ごめん。」
2人の間に夢と現実の間のようなふわふわとした空気が漂う。
...ほんとに、俺はどうしてしまったんだろう。
『京治くん、ここわかんない。』
京「どこ?」
すっ、とAの方に近づくとふわりと甘い香りが鼻をくすぐった。
今はなぜかそれすらも意識してしまって俺の耳に熱が集まるのが分かる。
教科書をもつ指先が触れた。
『...京治くん、顔まっか。』
京「そんなこと言ってると教えてあげないけど。」
『!嘘です!』
京「知ってる。」
知ってる。
俺の顔が赤いことなんて。
とっくのとうに。
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作者名:兎月うさぎ | 作成日時:2021年2月19日 22時