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そして迎えた土曜日の1時
俺が待ち合わせ場所に着くとAさんは既に来ていた。
勝手に待ち合わせは遅れてきそうなどと偏見を持ってしまったことを心の中で詫びる。
スマホから顔を上げて俺を見るなり彼女は笑顔を咲かせて駆け寄ってきた。
服装は意外と大人っぽくて制服とのギャップに少しだけ驚く。
『強引に誘ったから赤葦くん来ないかと思ってた。ありがとね。』
京「さすがにいいよって言ったからには行くよ。」
自分で誘ったくせに変なところで心配するんだな。
呑気に俺はAさんのことを変な人だと思った。
『あはっ、そーだね。じゃあ行こ!赤葦くん何食べたい?』
京「Aさんは何食べたいの?」
質問に質問で返す。
まさか返されると思っていなかったのか彼女は俺をビックリした顔で2度見してから考えるような顔をした。
初めて見るAさんの”本当にビックリした”というような顔に思わず俺は笑ってしまう。
『えっと...なんだろ。お好み焼きとか焼肉とか?』
京「じゃあ俺はお好み焼きが食べたいな。」
『まじで?私、赤葦くんの食べたいもので全然いいのに。』
京「俺はお好み焼きが食べたいから。行こっか。」
そう言ってから意外と自分が今回のお出かけに乗り気なことに気がつく。
なんでだろう。
俺はもうすぐ死のうとしている彼女に興味があるのか。
それとも単にお好み焼きが楽しみなのか。
お好み焼きのお店に向かいながらチラリと隣を歩く彼女を見る。
その彼女の生き生きとした姿はとても”死”を考えているとは思えなかった。
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作者名:兎月うさぎ | 作成日時:2021年2月19日 22時