A.藤原 丈一郎 ページ38
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「おやすみ〜｡」
そろそろルームシェアにも慣れてきた頃､自室に戻れば毎回葛藤する｡
それは､“槻から貰ったサインボールのお礼は伝えないままで良いのか”だ
サインボール､しかも証明書付きは野球ファンなら喉から手が出る程欲しい代物や｡
そんなとんでもない物をくれた方にお礼1つも伝えないまんまっていうのはええことなんかな？
ここに来てすぐの頃はそんなことにも気が向かないぐらい慌ててた｡新しい環境に家でのルール決めに最年長としてどう動くかを決めるとかで板挟みになってた｡ほんまにキツかったわ｡
楽しいは楽しいけどな｡
悩み始めたら見る度にそれを思い出す｡槻に聞こうにも忙しそうで聞けへんし､というか忘れてしまってる｡何故か皆で団欒の時間を過ごしてるときは思い出せへんのよな｡
今日こそは！って意気込んでもすぐ忘れてまう...｡
ほんまどないしよ｡
「ま､思い出したら聞くか｡」
今こんな悩んだって､そんとき思い出せへんかったら意味ないんやし､今日はとりあえず寝よう。
−
「ん...はぁ｡」
あぁ"ー､朝や｡起きな。
今日は確か午後からレッスン...うん､午前はフリーやな。
「お､美味そうな匂い｡」
今日の朝飯はなんかなぁ？いっつも槻ばっかに作らせて悪いから､早起きできた日だけでも代わりたいな...｡
部屋を出ると､大橋も同じタイミングで起きてきた｡なんやねん､見張ってたんか？
大橋の朝から元気なテンションに少し押されながら2人で階段を降りる｡
「藤原さん､大橋さん｡おはようございます｡」
「憐くん､おはよー！いつもご飯ありかとうな〜！」
「ん､はよ｡今日もええ匂いやな｡」
今日の朝ご飯上手くいったんですよ､と嬉しそうにくふくふ笑ってる槻に大橋もつられて嬉しそうに笑っとる｡
確かにチラッと見えたけど､めっちゃ綺麗にホットケーキが焼けてた｡小さめサイズやから､食べれる分だけ取って残りはデザートとか間食になりそうやな｡
テーブルの椅子に座って､大橋と槻と話してればどんどん皆も起きてきた｡
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作者名：雨水 | 作成日時：2023年3月27日 20時
