A.ー ページ29
.
7人それぞれが個性を持っており､飽きのこないグループだろう｡
ファンの声を見たことがないから､自分の主観だけど｡
その愛嬌が今は仇となっていることに気づいているんだろうか？いや､それはないな｡俺があの人たちの知りたいところは...｡
そうやって眉を潜めながら考え込んでいるとさっきまでなかった靴が目に入る｡
なんだ､これ？
「よっ､ため息なんかついてどないしたん？」
「ｯ！！！」
声がした方向に顔を勢いよく向ければ､そこには横山くんがいた｡
「よ､こやまくん...驚かせんで｡」
「悪い悪い､姿見えたからついなww
んで？どないしたん？世界が終わってまう〜ってぐらい思い詰めたような空気まとって｡ついに憐もなにわとトラブったか？」
悪いと思ってなさそうな笑顔を浮かべながら､冗談まじりに言葉をかけてくる｡
でも心配するときは真剣な表情をしてるから本当に心配してくれてるんだってわかる｡さりげなく右側に立ってくれてるところとか､少し小さな声で話してくれるところとか｡
だけどその優しさが今の俺にはちょっと...ううん､結構苦しい｡
「なにわ男子とはトラブってないよ｡それと“ついに俺も”って何？山も谷もない平行線だよ｡
ただ...おれは｡俺､はただ｡ そろそろ前に進まないとって思って...」
ほぼほぼ囁くような声で頭の中を支配している言葉を呟けば､横山くんは複雑な顔になっていた｡あーぁ､また迷惑かけちゃった｡
「あぁ〜っと､んー...それぇは､また難しいところやなぁ｡憐はそういう難しいこと1人で考え込むん好きやね？
まぁでも､確かに前へ半歩でも進んだ方がええのは変わらん｡やけどそういうことは焦ってするもんちゃうで？ゆっくり憐のスピードで進んだ方がええ｡いや､進まなあかん｡
無理なペースで突っ走ってまた壊れるぐらいなら､ゆっくり自分のスピードで進んだ方が何十倍もええに決まっとるやろ？」
でもそれは憐が一番分かっとるか､とケラケラ笑いながら大きくて温かいその手でわしゃわしゃとセットしていない髪を乱雑に撫でてくる｡これから練習やのにボサボサにせんでよ｡それにこうやって横山くんに話しとるから1人ちゃうし｡
ふてくされるように口をむっと突き出す｡
じわじわと何かが心を蝕んでくる｡
たまに横山くん達といると感じるやつだ｡なにわ男子の時とはまた違った...なんなんだろう､この感覚は｡どこか温かくて､どこか心を締め付けてくる｡
目を伏せて､また考え込む｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨水 | 作成日時：2023年3月27日 20時
