A.ー ページ28
.
笑顔の皆を見ながらそんなことを考える｡
休憩終了を知らせる声で皆､中央に集まった｡
さ！切り替えてこ！
ーーー
槻side
長い長い廊下を1人で淡々と歩く｡
今回の衣装はヒールが高く､沈んだ気持ちとは裏腹にコツコツと軽い足音が鳴ってしまう｡
歩いてる道中､ところどころ練習室から曲が漏れて聞こえてくる｡Jr.の皆さんが踊っているのかと興味が湧かず､流れる音楽の横を歩き続ける｡
「あっ...」
ただ､この音には足を止めてしまう｡
何個目かの練習室から聞こえるなにわ男子の曲｡まだ少し幼い高い声が扉越しに聞こえてしまい､扉の奥からの音に合わせて口が勝手に歌おうと声を出す｡
練習室の扉に手を伸ばし､開けるちょっと前｡阻止するように遠くから聞こえたジャラジャラとした音で正気に戻る｡
戻ってしまえば､すぐに練習室から離れて足早と自分の目的地へと向かう｡
なにわ男子｡
最近ルームシェアをするようになった関ジュのグループ｡7人の個性光る王道アイドルグループ｡最年長の藤原とリーダーの大橋､関ジュの不動のセンター西畑が皆をまとめながら､年下組と真っ正面から向き合えている｡
歩くスピードが少し落ちる｡
ルームシェアを始めたはいいもののこれといった出来事があったわけではない｡ただ大橋さん､藤原さん､西畑さん､大西さん､長尾さんが距離を縮めようとしてくるだけ｡他2人は人見知りでもしているんだろうか｡一切話しかけてこない｡
大倉くんから前々から持ちかけられていた提案｡なにわ男子が選ばれた理由は年齢が同じメンバーが2人いるからだと聞いた｡
それなら他の人たちとでも良かったんじゃないかって思うけど､大倉くんは大倉くんなりの考えがあるんだろう｡というか､無いと困る｡
なにわ男子とだけは関わりたくなかったから､バレないように距離を縮められたらその分距離をとる｡誰かにはバレてそうだけど｡
なんて考えていれば､目的地近くまで来ていた｡
「はぁ...」
こんな気持ちで練習はしたくない｡
足を止めて､人気のないところに向かう｡
気持ちを落ち着けるために深いため息をつけば､少しだけ気が楽になった｡
なにわ男子は明るく､愛嬌のあるいいグループだ｡ニコニコと愛嬌を振る舞いながらも､メンバーが繰り出す鋭いツッコミも見物｡
愛嬌といっても嘘っぽくない､見た人たちがたちまち笑顔になるようないいものだ｡
7人それぞれが個性を持っており､飽きのこないグループだろう｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨水 | 作成日時：2023年3月27日 20時
