A.ー ページ27
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みっちーは固く閉ざしていた口を開く｡
「っ､その...今は憐くんのこと考えるんやめません､か？」
「......え？なんで？」
予想の斜め上を言われたな...多分これ丈くんも聞こえとる｡水飲んどるように見えて中身全然減っとらん｡
まさかみっちーからそんなこと言われるって思っとらんかったから動揺してすぐ聞き返してもうた｡みっちーはみっちーなりになんか考えて伝えてくれたんよな､絶対に｡
なら俺もそれにちゃんと向き合わな｡
「怒っとるわけやないよ｡なんでそう思ったん？みっちーの考えを聞かせてほしい｡」
「...今はそろそろ8.8祭があります｡憐､くんのこと考えてパフォーマンスの完成度が下がるんは嫌です｡もちろん､一緒に住む上で憐くんと向き合うんも大事やと思います｡
だからといって僕らを見に来てくれた人達に生半可なパフォーマンスは見せたくないです...！」
少し考えてからみっちーは真っ直ぐ俺を見て伝えてくれた｡その目には憎しみとか恨めしさとかは一切入っとらん､純粋にファンのことを考えとる目やった｡
確かにみっちーが言ってることは合っとる｡いくら憐くんのことも大事とはいえ､ファンの子らに適当な物を見せるわけにはいかん｡それはどんな状況におかれてもや｡
お金を払ってまで俺らのことを見に来てくれとる｡なにわ男子をやなくても､他に出演する仲間のことを見に来てくれた人を俺は楽しませたい｡
それに真剣に練習して､ええものを作り上げようとする仲間たちに『考え事しとったからそんな練習できひんかった〜』は失礼や｡
...丈くんも同じらしいし､ここはリーダーらしく！俺が言うたる！
「せやな､みっちーの言う通りや｡
今は憐くんのことよりもこのステージをより良くするためにがんばらなあかん｡もちろん､憐くんも大事！でもそれより､ファンを楽しませなアイドルやない｡
よし！8.8祭が終わるまでは憐くんのことより､そっちを優先しよ！そのあと､皆でたくさん悩もな！」
みっちーの肩､は身長高くて無理やから､抱きつくような形でみっちーの背中に手を回す｡
バンバンとありがとうの気持ちを込めて叩けば､それが伝わったのかみっちーは嬉しそうに笑ってくれた｡
みっちーから離れてなにわの皆を見れば､今の話を丈くんが伝えてくれてたようでグッと親指を立てて笑っている｡
なにわ男子のこの温かさに憐くんも触れてくれたら､知ってくれたら距離は縮まるんやろか｡
笑顔の皆を見ながらそんなことを考える｡
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作者名：雨水 | 作成日時：2023年3月27日 20時
