Q.光を見た ページ13
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槻side
無機質なアラーム音を止める｡時刻を確認すれば､12:45｡
約束の時間が近づいているので体を思いっきり伸ばし､固まった体をリラックスさせる｡
「ふぅ...」
カーテンを開けるために床に足を下ろし､窓に近づく｡
シャッと勢いよくカーテンを開けて日光を浴びる｡光で目が痛くなるのはいつまで経っても慣れないが､少しでも明るく過ごすために我慢だ｡
そのまま下に降りて用意をする｡
今日の仕事はJr.としてではなく､槻憐個人にきている仕事だ｡
お世話になってるデザイナー2人が新しい服を作ったからそれの写真を撮らせてくれ､という内容｡本当は受けないけど､知り合いの親戚で頼み込まれたから事務所に許可をとって仕方なく受けている｡
俺ではなく､お金あるんだからちゃんとしたモデルさんに頼んだ方がいいと何回も言っているのに聞く耳をもってもらえない｡
毎回『憐は将来すごいモデルになるんだから､そんな原石を磨かずにいるなんてデザイナーの名が廃る！』と意味不明のことを言っている｡
どうせ着せ替え人形になるので､適当に服を選んで脱衣所で着替える｡
ズボンをスウェットからスティックパンツに履き替えて､上を同じくスウェットからパーカーに着替える｡
髪はどうせいじられまくるから､櫛でとけば完了｡
鏡に映る自分に目を向ける｡
黒髪に左右色の違う目｡分厚い眼鏡に気だるそうな顔｡前髪を少しいじって右目を隠す｡
「これのどこがモデルの原石だ...」
くしゃっと髪の毛を握りしめ､呟く｡
なんとなく鏡に映る自分に手を伸ばすと､同じ行動をする｡鏡だから当然だ｡
でも､鏡に映る自分はいつになく悲しそうな顔をしていた｡今すぐにでも泣き出しそうな､親とはぐれた子供のような､そんな顔｡
自分の頬を撫でるように鏡を指で撫でる｡
じーっと鏡を見つめ､なにやってんだろう､正気にもどって歯を磨く｡
そういえば今日､仕事以外になんかあった気がする｡それはわかっているのに思い出せない｡まぁいっかと考えるのをやめた｡
口をゆすごうとしたとき､インターホンが鳴る｡
今日誰か呼んでたっけ？
疑問を抱きながらも客人を待たせるわけにはいかないので､早歩きでリビングへ向かう｡
ピッと通話ボタンを押して答える｡
「ふぁい､ほちらしゃまでひょうか？」
歯みがき中ということもあり､結構間抜けな声になってしまった｡次からはちゃんとゆすいでから出よう｡
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作者名：雨水 | 作成日時：2023年3月27日 20時
