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.
A「ぅえ……っ、……っ。」
上映も終了して
照明も元に戻る頃
私の目は大洪水を起こしていて
目の前もろくに見えないまま
流れる人波に逆らわないように
彼に手を引かれたまま映画館を出た
.
隣に並ぶファミレスまで連れられて
席に着くと
気持ちを落ち着かせるように
数回、深呼吸を繰り返した
.
休日のお昼過ぎ
店の中はそれなりに混雑しているけれど
そんなこと、どーでもいいぐらい
気持ちはたった今見た映画のことでいっぱいになってた
現実的じゃないのなんて分かり切ってるのに
作り話だって分かってるのに
気持ちの切り替えが上手くできない
.
A「……卑怯ですよね……。死んだ恋人が会いに来るなんて……。」
翔「………。」
A「好きな人に死なれたら……きっと次の恋なんて……考えらんないかも……。」
.
裏切られただけでも
辛い思いをするぐらいなら
恋なんてしないほうがまし
……なんて思ってしまってる
いつか終わりを迎える恋なら
傷つくだけなら
恋をすること自体
目を逸らしてしまえばいいだけなのに
.
注文したアイスレモンティーをストローで、ず……と吸い上げた
それは流した涙の分
乾いた心の中を潤わせた
.
翔「でも……彼女はそれを乗り越えた……。」
A「………へ？」
翔「新しい恋は、傷を癒すだけじゃなくそこからもっと強い彼女を作ってくれた。」
A「………。」
翔「あの主人公は……Aさんと一緒ですよ。苦しんでもがきながら一歩を踏み出した。」
A「………。」
翔「苦しみは……いつかきっと解放される日がきますから。」
A「………え？」
翔「傷つきながらもAさんだって……本当は、恋したいって思ってるんでしょう。」
A「………。」
翔「だって……恋に疲れた人がラブストーリーなんて選ばないでしょ？」
.
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作者名：四葉（よつば）
作成日時：2014年5月3日 16時
