気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ39)

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３０５話#　その言葉の意味ページ39

～Aside～

引き寄せられたその瞬間、何かが体中に伝わった。

修也「...ネコ(ボソ)」

足元に気配がして、下を見るとネコが１匹通り抜けていく。

A「あ、ほんとだ」

ビックリした...

ネコは何も気にせず前へと歩いていってしまった。

なのに腕が放されることはなかった。

え、なに？どうしてこのままなの？

もう放してよ。

必死に笑ってみる。

A「危ない。ネコ踏んじゃうトコだった。ははは」

修也「...」

A「ありがと(微笑)」

今度こそ玄関に入ろうと身を翻す。

でも掴まれたままの腕によって、またその場に引き戻された。

とっさに合わせてしまった修也の目は、真剣そのもの。

修也「A。また会ってもいいか？」

A「！！」

また会ってもいいか？

この言葉の意味は分かる。

分からないほどあたしは馬鹿じゃない。

でも、お願い。

A「全然いいよ。木曜にヒロトがお日さま園から戻ってくるから、またみんなであつま」

修也「そうじゃなくて」

A「！」

修也「２人で、会いたいんだ」

A「！」

今度ははっきりと言われてしまった。

修也の目は、断ることは許さないと言っているようだった。

A「...う、うん。それでもいいよ」

修也「ありがとう。じゃあまた、会いに来る」

かろうじて応えると、修也はそっと微笑んで、手を振って去って行った。

力が抜けたように、へなへなとした気持ちになる。

途方に暮れながら、あたしは家の中へと入った。

脱ぎ捨ててあった緑川のスニーカーを揃えて、廊下に踏み入れる。

リビングのドアにあるホワイトボードには、「おつかれ。俺先に寝てるね」と書かれてある。

よかった。

あたし、今どんな顔をしてるか分からない。

他の人には見られたくなかった。