気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ36)

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３０２話#　手探りの帰り道ページ36

～修也side～

Aの家はここからそう遠くはない。

だけど送るぐらいさせてほしい。

修也「家まで送る。行こう(微笑)」

A「！」

戸惑うAをよそに歩き出す。

ちょっと、強引かな。

...それでも、俺にはAと一緒にいたい理由がある。

あの日ヒロトが語っていた真実が、知りたい。

Aが歩幅を速め、俺の隣に並んだ。

A「ありがと」

修也「さっきの人は？」

A「バイトの先輩。バイト帰りに１杯だけね」

修也「バイトか。何のバイトをしてるんだ？」

A「本屋だよ、駅の反対側の出口の方」

修也「へぇ、そうなんだ」

A「去年からやってるの。普通にみんないい人だし」

修也「そうか。良かったな」

A「修也はバイトは？」

修也「特にしてない。たまに稲妻ＫＦＣの子供達の練習相手に呼ばれるけどな」

A「稲妻ＫＦＣ...」

Aの目が少し遠くなる。

A「マコがいたチーム...」

修也「ああ。ＫＦＣの監督が俺の高校時代の監督と知り合いで、その繋がりさ。コーチをやってくれとも頼まれてるんだけど、俺も忙しくてさすがに無理だ」

A「だよね、さすがにコーチはね(笑)」

修也「？」

一瞬だけAの顔が陰ったような...

気のせいだろうか。

修也「マコは、元気か？」

A「元気よ。今中学に通ってる」

修也「夕香も中学だ」

A「実家にはどれぐらい帰ってる？」

修也「俺は２週間に１回は帰っている」

A「へー。あたしは２ヶ月に１回ぐらい」

修也「そうか」

２ヶ月に１回？

同じ東京に住んでいながら、そんなに帰らないものなのか？

Aって普段そこまで忙しいのかな。

ダメだ。謎だらけ。

まるでつかめない。

ゆったりとした足取りで、住宅街へと入っていく。

街路灯は俺たちの口数と共に少なくなってきた。

Aとの間に流れる沈黙。

昔から、俺はこの沈黙が好きだった。

他の女子といる時の沈黙は気まずくて苦だったが、Aは...何故だろう。

どこか心地良いんだよな。