気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ30)

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２９６話#　スコーンページ30

～Aside～

修也にヨーグルトを手渡す瞬間、一瞬だけ指が触れた。

A「！」

ポーカーフェイス、ポーカーフェイス。

動揺なんてするもんかと思っていると、風丸がタイミングよく口を挟んだ。

風丸「豪炎寺、このスコーン美味しいぞ。オレンジチョコ味だって」

A「世界大会の時、イナズマジャパンのみんなに1回これを差し入れしたんだよね。あの時風丸がすごく気に入ってくれたって修也が言ってたのを、思い出して」

風丸「ほんとに久しぶりだよ、これ。毎朝食べたいぐらいだ」

修也が起きるまで、短時間で焼き上げていたのだ。

スコーンを手に取った修也が、それを一口齧る。

修也「...うまいな」

A「ありがと(微笑)」

彼から呟かれた一言に、あたしは上手に笑えていただろうか。

・

朝食を食べ終え、あたしは立ち上がって緑川とヒロトを起こしに行った。

A「起きろー！バイト遅刻するー！！」

ヒロト「ん...今何時？」

A「10時」

緑川「うー、もうそんな時間か」

身支度をしに行った彼らをよそに、冷蔵庫の脇からジッパーつきの袋を取り出してスコーンを３つずつ入れる。

風丸「それあいつらの弁当？」

A「うん、持たせる」

風丸「さすがだな」

A「女子力なら自信ある。あ、風丸も余ったら持って帰る？」

風丸「それは有難い。俺ほんとにこれ好きなんだ」

支度を終えた緑川とヒロトを玄関から送り出す。

A「じゃ、行ってらっしゃい」

緑川「行ってきまーす」

ヒロト「バイト行く時、戸締りしっかりね」

A「うん」

ヒロト「じゃあね」

そう言って彼らは出かけて行った。

あたしのバイトは15時から。まだまだ余裕だ。

・

#道#

～ヒロトside～

家を出た瞬間、俺は顔を引き締めた。

それは緑川も一緒。

最寄り駅への道を歩きながら、緑川は呟く。

緑川「A、楽しそうだったな」

ヒロト「...ああ。やっぱり、豪炎寺くん効果だね」

緑川「でも、豪炎寺にはもうその気はないらしいぞ」

ヒロト「！」

緑川「俺さ、昨日あいつらと待ち合わせする時、風丸と話していることを聞いちゃったんだよね。そしたら豪炎寺が、Aのことは高校に入ってから吹っ切れたって、言ってた」

ヒロト「うそ...」

緑川「Aが鬼道と付き合っていることを知って、諦めたんだな」

ヒロト「それ、ほんと？」

緑川「ああ」