気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ28)

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２９４話#　悟ってしまったその理由ページ28

風丸「あの...さ」

A「？」

風丸「実は俺...聞いちゃったんだ」

A「...何を？」

フライパンを洗っていた手が止まる。

風丸「...高１の時、大会で鬼道の高校と当たって」

A「！」

風丸「試合後のロッカールーム。俺、鬼道に用事があって訪ねようとしたんだ。盗み聞きした訳じゃなかったんだけど、聞こえちゃって...」

そう。

あの日、試合の後、あたしは鬼道にフられた。

ロッカールームで交わされた会話を、風丸は知ってたというのか。

思わず水道をひねって水を止めてしまった。

ぬれた手で風丸にしがみつく。

A「そのこと、修也には？話したの？？」

風丸「っ！」

A「言っちゃったの？」

風丸「いや...話す必要はないって思ったから、話してない」

A「はぁ、そっか」

再び水道をひねり、フライパンについていた泡を洗い流す。

何で、こんなに安心するの？

何でだ...

・

～風丸side～

洗い物の作業を再開したAの手から力が抜けた、ように見えた。

何だ、そういうことか。

俺は悟ってしまった。

Aがこんなにも安心している理由を。

あの日、Aにフラれたことをきっかけに豪炎寺が吹っ切れたことは、Aも知っているはず。

豪炎寺が吹っ切れたのは、あくまでも鬼道とAが付き合っているという現実を前にして諦めたからだ。

もしAと鬼道が別れたことを豪炎寺が知っていて、その上でAに対して完全に吹っ切れたのであれば...

それはすなわち、豪炎寺にはもうAに対する気持ちない、ということ。

でも実際俺が豪炎寺に真実を伝えなかったため、豪炎寺は鬼道とAが交際している事実を呑み込んで諦めた。

Aが、豪炎寺に事実を知られたくなかったのは...

怖かったからだ。

事実を知った上で豪炎寺が自分に対して完全に吹っ切れてしまうことを。

それが何を意味するのか、俺には痛いほど分かった。

風丸「...」

A、お前...

本当は豪炎寺のことが好きだったんだな...

昨夜、ヒロトと豪炎寺が話していたことが頭に残っている。

きっとAには何かがあったんだ。

だから本当は豪炎寺を好きでいながら、鬼道と付き合ったんだな。

いったい、何があったのだろう。