気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ27)

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２９３話#　風丸一朗太ページ27

～Aside～

目を覚ますと、すぐ隣で緑川がグーグー寝ていた。

いつのまに寝ちゃったんだろう。

カーテンの隙間から差し込む朝日。

７時前だ。

あたしは体を起こして周りを見回す。

見事に全員寝ていた。

タオルケットを緑川の上にかけ直して、キッチンへと向う。

昨夜の食器を静かに洗っていると、目を覚ました風丸がこっちへとやって来た。

風丸「A」

A「風丸...起きたの？」

風丸「ああ」

A「ソファでごめんね。ベッドが良かったら上の部屋貸すけど」

風丸「もう起きているつもりだ。それより、手伝うよ」

A「ありがとう」

水切りの上に重なっていく食器を、風丸は丁寧に拭いていってくれた。

A「意外と手際いいんだね」

風丸「Aには劣るけどな。この家で全部家事をやってるのか？」

A「まさか。料理は基本あたしだけど、他のことはあの２人と分担してるよ。手が空いた人がやる感じ」

風丸「へぇ、けっこう効率いいんだな」

A「うん。大学卒業するまでたぶんずっとこの暮らし」

風丸「あのモテるヒロトと同居なんて、大学の連中から妬まれるんじゃないのか？」

A「共通の知り合いしかそのこと知らないの、だから大丈夫」

風丸「ふーん」

A「ま、これ以上家にイケメンが増えたらあたしもたぶんやってらんないけどね(笑)」

風丸「あいつらとは何もないのか？」

A「ないよー、全然」

風丸「A、大学に入ってから彼氏は？」

A「１年生の時に一瞬いたけどすぐ別れちゃった、それからは１人も。まぁ、恋愛ってそんなもんだよねー」

風丸「まあな。俺も全然恋愛なんてしてないや」

A「もったいないなー、イケメンなのに」

風丸「...豪炎寺こそ、だろ」

A「！」

ふと風丸を見上げる。

すると風丸の目は、まるであたしを見据えているようだった。

風丸「あいつも高校の時からすごいモテてたのに、とうとう１人も彼女作らなかった」

A「そ、そうなんだ...」

風丸「Aは、鬼道と別れちゃったんだな」

A「まあね」

忘れはしない。

中学卒業の前の日、道端に咲いた鮮やかなタンポポ。

鬼道と２人で修也に遭遇してしまったあの時、風丸もあの場にいた。