気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ25)

今日:9 hit、昨日:5 hit、合計:97,575 hit

２９１話#　現状ページ25

運び終わってソファに座り直し、緑川と寝ているAに目を向ける。

修也「......」

何だろう、この何とも言えない感情は。

Aの長い前髪が、目にかかっている。

それを掃ってあげようと、俺はゆっくりと手を伸ばした。

その次の瞬間。

ガラッ

ヒロト「！」

修也「！」

ヒロトが戻ってきたので慌てて手を引っ込めた。

俺も、酒が入っているからな、少し上がっているのかもしれない。

誤魔化すように口を開く。

修也「緑川は、酔っ払ったらいつもこうなのか？」

ヒロト「...」

するとヒロトはクスッと笑って風丸の上にタオルケットかけた。

ヒロト「知りたいのは、緑川のことじゃなくてAちゃんのことなんじゃないの？」

修也「っ！」

ヒロト「そうだよ。２人は酔ったらいつもこうなる。ベタベタしてて面白いよ」

修也「...」

緑川とAの上にタオルケットを広げながら、ヒロトはまた笑った。

ヒロト「ふふっ、なーんてね。Aちゃんは俺たちの中でも一番お酒強いから中々酔っ払わないよ。疲れてる時に寝ちゃうぐらい」

修也「...」

ヒロト「俺も緑川もAちゃんには手を出さないから、安心して」

修也「...そんなこと言われてもどう反応すればいいか分からないじゃないか」

ヒロト「あはは、だよね(笑)」

笑った顔を真顔に戻して、ヒロトはまた言った。

ヒロト「で、豪炎寺くんは、Aちゃんのことまだ好きなの？」

修也「...いや、別に」

ヒロト「昔はたぶんそうだったよね」

修也「昔はな。でも今はもう違う」

ヒロト「うわー、悲しいなぁ。Aちゃんは豪炎寺くんが来るからって張り切って料理頑張ってたのに」

修也「なっ、そうなのか？」

ヒロト「少なくとも俺にはそう見えたけどね。Aちゃんがもともと料理好きなのは一緒に暮らしててすぐ分かったけど、今日はいつもより張り切ってたもん」

修也「...」

１つ、気になっていたことがある。

今なら、聞いてもいいだろうか。

修也「ヒロト」

ヒロト「うん？」

修也「この家、大家さんいないだろ」

一瞬ヒロトから表情が消えたのを、俺は見逃さない。

修也「この家は本当はヒロトが所有していて、シェアハウスなんて都合のいい名前をつけてAを誘って、一応安い家賃をもらって一緒に暮らして...普通の学生ならこんなことしない。お前には何か目的があるんじゃないのか？」