気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ16)

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２８２話#　過去の自分は... ページ16

～Aside～

細かく切ったほうれん草とハムを混ぜた卵焼き、わかめスープと白いご飯。

健康重視の簡単夜ご飯だ。

食卓に２人分のご飯を並べて、修也を椅子に座らせる。

修也「いただきます」

A「いただきまーす」

質素すぎるおかずで、ちょっと不満だけど仕方ないよね。

わかめスープを一口飲んで、修也が聞いてくる。

修也「今日は緑川たちは？」

A「バイト。普段土曜はあたしもバイトだから３人とも夜はいないんだけどね」

修也「そうか。わざわざ作ってくれてすまないな」

A「ううん、全然。それよりこんなものしか出せなくてごめんね。台風で買い物行けなくて」

修也「いや、十分だ、俺も病み上がりだし」

A「だいぶ熱下がったから良かった。でも食べたらまた薬飲んでね」

修也「薬、ちゃんと色々持っててすごいんだな。俺の家なんて何もない」

A「まあ、薬ぐらいならちゃんとあるよ」

修也「まるで医者だ」

A「...あはは、そうだね」

まるで医者...か。

A「それより、卵焼き、どう？」

修也「うまいぞ。食べやすい」

A「油と調味料はかなり控えめにしてあるの。あんまり胃を刺激しちゃだめだから」

修也「料理なら俺も大学で知識をつけているんだ。栄養学とか、スポーツ健康科の必修授業に組まれている」

A「へぇ、面白そう。他にどんなこと習うの？」

修也「最近はコレステロールの仕組みとか、あとは...」

ねぇ修也。

栄養学なら、あたしだって大学で勉強しているんだよ。

弾む会話をしながらも、内心は浮かない気分。

それにしても。

あの中学を卒業する前、修也とはあんなに悲しい別れ方をしたのに。

今の修也からはあの日のことを引きずるような素振りは何も感じない。

あの頃のあたしは馬鹿だったなぁ。

修也のことを忘れるために鬼道と付き合って、心の隙間を埋めていた。

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A「ほんとにごめんなさい。あたし...修也の気持ちには応えられない...」

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A「あたしは１人で強くなるよ。鬼道がいなくても、頑張れる」

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結果、修也のことも鬼道のことも傷つけたんだ。

あれからは毎日を自分らしく生きてきたけど、過去は消せない。

修也はきっとあれから...

時が過ぎて吹っ切れて、あたしのことなんて忘れてサッカーに打ち込んでいたに違いない。