気まぐれボイジャー【豪炎寺修也】第八章 (ページ1)

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#家#

ピーー、ピーー、ピーー

通知音が鳴ると、まるで魔法がかかったように良い香りがしてきた。

炊飯器の蓋を開けると、その香りはさらに強く鼻を刺激する。

匂いはオープンキッチンの外まで漂ったようで。

ダイニングテーブルの席に着いていた彼が言った。

「わー、いい匂いだ。今日は何だい？」

A「枝豆だよ。昨夜のおつまみの残り」

「へぇ」

彼が読んでいた新聞を畳むタイミングで、朝ごはんをテーブルに並べる。

鱈の塩焼きに茄子の味噌汁、そして枝豆の炊き込みご飯。

最後にプレーンヨーグルトを小さなデザートカップにスプーンで入れて、マーマレードのジャムと軽く混ぜ合わせる。

「昨日は宅飲みしたから、朝からヨーグルト？」

A「当たり。お酒飲んだ後の朝はヨーグルトで腸内フローラのバランスを整えなくちゃ」

「ふっ、健康的だな。さすがは医学部、さらに国立ときた」

A「そっちこそ同じ国立でしょ。経営学部だけど」

彼からもらった水色ギンガムチェックのエプロンをフックに引っ掛け、あたしも食卓に着く。

「いただきます」

A「いただきます」

「ん。枝豆ご飯おいしい」

A「うん、ほんとだ」

「昨日はたけのこで醤油味がきいてたけど、今日は爽やかな味がする」

A「ありがと。明日はにんじんご飯にしよっかなぁ」

「炊き込みご飯ブームだ」

A「簡単でラクでおいしくて健康。最高」

味噌汁を啜って、彼はまた言った。

「夢は、キミみたいに料理が美味しいお嫁さんをもらうことだ」

A「なーに言ってんの。もっと上手な人なんて掃いて捨てるほどいるし。だいたい大学でも屈指のモテ男なんだからそんぐらい容易いでしょ、ねー？ヒロトさん？」

ヒロト「ふふっ、言ってくれるじゃん(笑)」

あたしが朝ごはんを作っている間に、身支度を済ませるヒロト。

そしてヒロトが食器の後片付けをしている間に、今度はあたしが身支度を済ませる。

時間割が合う日は、一緒に家を出るのがお決まりだ。

今日も、いつも通りの朝。

大学２年生の日常。