仏【】�� ページ38
列車はトンネルに入ってから、もう随分と経った。いつになれば終点に着くのだろう。そもそもここはどこなのだろう。先程出会った3人以外には、景色の外を含めても、人は1人も見当たらなかった。
「誰かと思えば、ああ、貴方でしたか」
1人の男性が、静かに口を開く。もう随分と歳をとっており、その姿は疲れ果てているようにも見えた。どうぞ、ムッシュ、座ってくださいと俺が言えば、彼は会釈をして腰を下ろした。
決して豪華とは言えない服。コートを羽織り、少しよれた帽子を深く被っている。暗い印象を受けるが、実際そうだった。彼の表情は固く、瞳に明かりはない。その瞳の奥には、ぞっとするほど深い闇を抱え込んでいた。
「祖国、僕は正しかったのでしょうか」
ふと彼は口を開いた。
「僕がこのようなことを言ってはいけないとは存じています。それでは今までの罪人が救われない、とも」
彼は処刑人だった。2700を超える人を処刑した、革命に飲み込まれたうちの1人だった。そして皮肉にも王党派だった。尊敬していた国王を自らの手でギロチンにかけた。死刑に反対し、いくつもの手紙を議会に提出したが、それが叶うことはなかった。
「たまに思うのです。もっと僕が声高に死刑反対を唱えていれば、と」
僕が手にかけた人々の殆どは、罪なき人だったのではなかったか、と処刑人はぐったりと項垂れる。
俺は何も言えなかった。こればかりは、国が口出ししていいことではなかった。そして、しばらくしてから彼は顔を上げた。先程の悩みは、今更考えても仕方がないと結論付けたようだった。
「祖国、この列車がどこに行くかご存知ですか」
いいや、と俺は答える。彼は何も答えず、ただ目を細めた。
どこに行くか知っているのかい、と俺が聞けば、彼は知りたいですかと窓の外を見た。
「ほら、ご覧下さい。外は真っ暗でしょう、灯りがないでしょう、けれど僕がこの席を離れた後、燃えるように外は明るくなると思いますよ」
最初、彼が何を言っているのか分からなかった。俺が眉を潜めれば、彼は分かりにくかったですかね、とこちらに向き直った。
「僕はただの時代の証言者にすぎません。祖国の列車の旅はもうしばらく続くでしょう、そして恐らくは、貴方の見知った"21世紀"に辿り着くはずです」
長らく続いた恐怖政治。彼の言葉と窓の外の闇は、それを連想させた。
ラッキーアイテム
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この作品の考察のヒントや小ネタを担当キャラが言ってくれるそうですよ
露(蛇)「緑色の目をした怪物。シェイクスピアの『オセロ』に出てくる嫉妬の怪物だよ。無意識のうちに僕はまだ彼女のことが諦められないでいたのかなぁ……」
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桜 水樹 - (バレンタインの話)プーよ…なんて不憫な…wwてかアーサーすげぇなおい!!ちょっとそのチョコわけろよ!!ww (2017年5月22日 0時) (
レス) id: 0aefdd481f (このIDを非表示/違反報告)
黒閖(プロフ) - いえいえ、と言うよりも先進有難いです！！、 毎日ちら見しに参りますね！！(笑) (2016年8月15日 23時) (レス) id: 9214fadac6 (このIDを非表示/違反報告)
ほたてろいど(プロフ) - 黒閖さん» コメントありがとうございます！ お褒めの言葉を頂き嬉しく思います。これからも精進してまいります！ (2016年8月15日 23時) (レス) id: aa355565b4 (このIDを非表示/違反報告)
黒閖(プロフ) - 意味深な終わり方や表現の仕方に色んな意味で心臓がﾊﾞｸﾊﾞｸしたり、ぞく . とします。 この作品は迚も最高です! 、ほろ苦さを感じる系のものも良いですね!、応援してます、頑張って下さい!、 (2016年8月15日 23時) (レス) id: 9214fadac6 (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - ほたてろいどさん» こんなに早く書いて下さってありがとうございます！！もう素晴らしすぎて興奮が収まりません…！本当にありがとうございました！！ (2016年7月22日 11時) (レス) id: fe9fcb5e70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほたてろいど | 作成日時：2015年10月12日 20時
