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「真実という名の嘘」 ページ15

「・・・・・・は?」

少年の声はひどく掠れていた。喉からしぼり出しかのように。

「え?いや、だってさ、こんなことができる人なんかいないでしょ?まぁ見た目は人だからね。勘違いしちゃうのも当然、かな?」

店主はそんな様子を気にせずに淡々と喋り続ける。

「僕が人間じゃないとして、だ。それで結局消すの?やめるの?まぁ僕は何もとらないからやめて損するといえば消したいものが消えないだけだよ。逆に言えば消したらリスクがついてくるし。で、どうするの?」

店主は少年の目を見続ける。少年はその目に吸い込まれるかのような錯覚を覚えた。

「っ、ほ、ほんと、は」
「本当は?」
「ほん、とうは 」
「いいよ。なんでも」





「母を、け、消してほしい」

やっぱり、か。と店主は思った。

僕からしたらピアノは大好きなんだろうけど母のせいで楽しめなくなってるんだよね、憶測を店主は並べる。

好きなものを心から楽しめない、楽しむためにはそれを邪魔するものを排除してしまえばいい、子どもながらにして恐ろしい発想でもある。

「お母さんを消す、っていうのは自分が何を言っているのか分かってるよね?」

少年はうつむく。

「つまり、殺してほしいってことだよね?君は直接手を下しはしないから罪には問われないよ。まぁそうする気だけどさ。事故とかにして、ね。でも君は自分を産んでくれた世界でたったひとつの母を殺すことになる、道徳的に君は反することをやっている。それでもいいのか?」

そういう店主を見て少年は恐ろしい考えが浮かんだ。

「・・・・・・僕以外にもいるんですか?誰かをけす、いや殺してほしいって言った人が」

少しの沈黙の後に店主が口を開いた。

「いるよ。君と理由は違うけどさ。確か、女の子だったんだけどさどうしても憎くて憎くてたまらないやつがいるらしくて殺してくれって頼みに来たよ。」

「哀れなものだ。どんだけ相手に憎悪を抱いていても本能、いや理性的に人を殺してはいけないと分かっているから人ではない自分に頼みに来る。自分に汚れ仕事ばかりを背負わせてくる。」


「あの、」
「ん?何?」
「えっと、」

「ああ、心の声が漏れてた、かな。まぁ今言ったのは独り言。気にしないで」

「あの、その、帰りますっ!」

少年は勢いよく立ち上がった。その拍子に椅子が倒れた。少年はそんなのおかまいなしに扉へと向かい帰っていってしまった。

店主と涼やかな音色を奏でる鈴が取り残された。

「自慢」→←「重圧」



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作品ジャンル:ホラー
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嘘つきピエロ - 心に響くものがあってめっちゃ惹かれました! (2020年11月29日 1時) (レス) id: f059c2a2b0 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - ドォナツさん» 返信遅くなりすいません!ありがとうございます!こういう世界観って書くのが難しいんでそう言ってもらえて嬉しいです!ありがとうございます! (2020年5月14日 18時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
ドォナツ - ダークな世界観が大好きです!応援してます (2020年5月7日 16時) (レス) id: 871381f269 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - haru☆さん» うわああああ!すごい嬉しいです!私が好きな世界観を私なりに作っているのでそう言ってくださって嬉しいです!ありがとうございます! (2020年4月21日 22時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
haru☆(プロフ) - 世界観が凄い好きです、更新頑張ってください! (2020年4月21日 19時) (レス) id: 8a171a65b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レイン | 作者ホームページ:http://utanai.nosv.org/u.php/hptyomatu/  
作成日時:2020年2月22日 13時

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