2人の未来へ 6【TH】（完） (ページ13)

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Another story タカ　＊2 ページ13

彼女と出会ってかなりの年数が経つというのに、
なかなか想いは伝えられない。

それは、彼女の気持ちが僕に向いていないのがわかるから。

こんな状態で、想いを伝えて今の関係が変わってしまうことが怖かったんだ。

正直、僕の想いを伝えられる日が来るのかはわからない。けれど、仮に彼女に恋人が出来ても、結婚するまでは彼女のことは諦めない、そのくらいの強い想いだった。

こんなに好きなのに片想いを続ける僕を
メンバーは少し馬鹿にしながらも応援しているらしい。

いつものように海外のライブツアーが始まったときだった。

僕だけ単独の仕事があったため、
メンバー達とは1日遅れでAと共に、アメリカからイギリスへ向かうことになった。

2人きりの移動時間。

たまに訪れるこの時間が、僕は好きだった。
仕事の話、彼女の最近の日本での話、色んな話を彼女を知ることができるから。

「いつもそのマフラーだね。」

「はい、昔からBurberryのこの色が好きなんです。」

「そっか、冬になるとずっと着けてるもんな。街でそのマフラーを見かけるとAを思い浮かべるよ。物持ちいいんだな。」

「あっ…でも、これは去年いただいたモノなんです。その前までのマフラーは、何年も使っていたモノだったんですけど。」

マフラーに触れながら少し嬉しそうに笑うA。

そのマフラーは誰にもらったモノ？

簡単に聞けるはずなのに、
躊躇してしまい、聞くタイミングがなくなってしまっていた。

「タカさん、まだ時間ありますし、コーヒー買ってきますね。いつものでいいですか？」

"いつもの"

僕のことを理解しているような言葉に、
胸が暖かくなる。

「ああ、お願い。そこに座ってるから気をつけてね。」

彼女は小走りでコーヒーショップへと向かった。

彼女に言った"気をつけてね"にはちゃんと意味がある。

Aと一緒にいると、知らない人から話しかけられることが多い。

日本でも海外でも。

道を尋ねられたり、商品のサンプルを渡されたり、勧誘だったり。

それらに、一つ一つ丁寧に返してしまうのがAだから、海外では危機感を持つようにって何度も言ってるんだ。

今も空港で1人コーヒーショップに並ぶ彼女を遠目で見ている。何かあると不安だから。

その予感は的中し、長身でマスクをかけた怪しい男の人に声をかけられていた。