2人の未来へ 6【TH】（完） (ページ12)

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Another story タカ　＊1 ページ12

僕には結婚したいと思う人がいた。

彼女の名前はA。

彼女と初めて仕事をした時、なぜか結婚するならこの人だと感じたんだ。

僕には彼女がいたし、すぐにどうこうするつもりなんてなかったけれど、結婚して家庭を築くならばこの人がいいと思った。

控え目なのに、仕事は完璧でいつも優しく微笑んでいてくれるその雰囲気に落ちたんだと思う。

僕の周りにはいないタイプの女性。

いつか、僕のことを好きにさせたい、
そしてこの人と結婚したいと

馬鹿みたいにだけど、出会ったその日にそう思ったんだ。

それからは、海外で通訳やコーディネーターが必要な時は彼女を呼び、出来る限り僕の側にいるようにさせた。

もちろん、彼女の仕事柄、ずっと一緒にいるなんてのは不可能だとわかっているからこそ、
担当制ではない彼女の会社に無理を言って、僕らの仕事は彼女を担当者にしてもらっていた。

彼女と過ごす日々は、側にいるだけで幸せだと感じていた。

彼女の名前を特に用事もないのに、呼んでしまうことがある。

僕のことを見て欲しいから。

少しは僕を意識して欲しいから。

彼女は名前を呼ばれると、僕の呼びかけに返事をして、僕の目を見てくれる。

彼女は人と話をする時、大きな瞳でジッと目を見るんだ。何度もその瞳に吸い込まれそうになった。
何度も何度もそのまま僕のモノにしたいと思った。

何も用事はないから、振り向いて僕を見る彼女を、
僕はただ見るだけ。

「フフっ、タカさん？私の顔、何か変なモノついてますか？」

そう言って、クスクスと笑ってくれる彼女が好きなんだ。

恋人はいないと言っていた彼女。

仕事が好きだということが、見ていてもわかるし、
忙しい彼女にはなかなか普通の恋愛は難しいのだ感じいた。

だから、僕も焦りを感じることはなかった。

少しずつでいいから、僕を好きになってもらえばいい。

僕が彼女にとって、近くにいる存在だと
どこか自信を持っていたから。

　

あの、アメリカの空港での出来事が起こるまでは。