言えない、伝えたい TH (ページ34)

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＊TH ページ34

TH side

ー現在ー

僕は手紙を持って走り出した。
ヒョン達が僕を制止する声が聞こえたけれど、
この手紙が何かの間違いである事をこの目で確かめないと。
僕は車に乗ってAのマンションに向かった。

この時間、Aは仕事中。
でも、もらっていた合鍵があるから。
部屋に行けば、そこには僕らが過ごしていた
あのいつもの空間があるはず…
それは、Aは韓国にいるってことで…
ちゃんと話せば元通りになれるはずで…

.

.

………ガチャッ

.

そこには、何も無かった。

いつも一緒にご飯を食べていた
小さなガラステーブルも、
キッチンカウンターに置かれていたトースターも、
2人でDIYにはまって作った本棚も、
Aが育てていた植物たちも、
僕らが何度も愛し合ったベッドも、

何もかもが無くなっていた。

まだ信じられない、部屋を間違えたのかと、
部屋番号を確認してもやっぱり、ここは彼女の部屋。

.

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微かに彼女の香りがして

でもそこに彼女はいなくて、

やっと、僕は彼女を失った事に気付いた。

.

.

.

彼女の部屋を出てから宿舎に戻るまでの記憶はほとんどない。

宿舎に着いたらジョングクが僕に詰め寄ってきて
ヌナの手紙は何て書いてあったんですか？ヌナ、アパートにいましたよね?スマホ無くしてただけですか？
と、一方的に話してくる。

その声が聞こえたのか、次々にメンバーも集まってきた。

僕はといえば、
悲しみ、喪失感、もう色んな感情でぐちゃぐちゃだった。
僕を残していなくなったAに対しての怒りもある。
もう、何が何だかわからない。
何でこんな事になってしまったのか。

「ジョングク、Aはもう韓国にはいない。日本に帰ったんだよ。」

「えっ？…それはどういうことですか？」

「日本への転勤だって。…僕のことなんて何も考えてくれなかったんだよ。一人で決めてさ…」

「ヒョンは何も聞いてなかったんですか？ヌナは本当にヒョンに何も言わずに？」

「ああ。僕との未来は考えられないって…あんなに一緒にいたのに、何でだよ！こんなの裏切りじゃないか！」

「っ…、ヌナはヒョンを裏切る人なんかじゃない！！！！」

ジョングクの大声に
僕も、メンバーも思わず圧倒されて
何も言えなくなった。