言えない、伝えたい TH (ページ4)

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５年前

大学を卒業後、日本企業の韓国支社へと就職した。

本当は日本での採用だったけれど、韓国語が話せることから、人手が足りていなかった韓国支社への入社となった。

アパートの近くにある公園には
沢山の桜の木があった。

会社からの帰り道、
日本での生活を思い出すように
公園の桜の下のベンチに座って、コーヒーを飲むのが日課になっていた。

ある日、私は胸元のポケットに入れていたペンを無くしてしまった。

友人からもらった名前入りのペン。

日本から一人離れて暮らす私にとって
お守りのような存在だった。

無くした前日の足取りを辿って
いつもの公園に立ち寄ると、いつも私が座っている場所にペンを持って待っていたのがテヒョンだった。

「コレ、落としましたよね？」

キリッとした顔立ちで、低い声。
でも、柔らかな笑顔とゆったりとした話し方が特徴的な可愛い男の子だと思った。

「ありがとうございました。探していたので、拾っていただいて、すごく嬉しいです。」

彼にお礼を言いペンを受け取った。

「今度何かお礼させてください。名刺か何かありますか？」

まだ20歳になったばかりのテヒョン。
少しずつBTSとしての人気も高まりつつある時期だったと思う。

けど、芸能界に疎い私は
アイドルだなんて知らずに軽い気持ちで言った言葉だった。