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スタジオでの撮影が終わり、会社に戻って雑務をこなしていた時、部長に声を掛けられた。
「そろそろ片付きそうだな。一緒にご飯でも食べて帰るか？」
「あっ…すみません、今日はこれから予定が入っていて…。ここ片付けたら私もすぐ帰りますね。」
「…そっか。今日もお疲れ様、先に帰るな。」
「はい、お疲れ様でした。」
部長は何か言いたそうな空気は感じたけれど、
まだ答えは出ていないから、何も言えなかった。
テヒョンにはどんな風に話したら良いのかな。
日本への転勤の話があることをまず言わないとだよね…。
伝えたら何て言ってくれるのかな。
行かないでって言ってくれのかな。
韓国に残るのなら、その後のこと…
テヒョンは考えてくれるのかな。
何て切り出そう…
テヒョンにどう伝えるかで頭の中がいっぱいだった。
時計をみるともう8時を過ぎて、片付けのスピードを上げた時、スマホが鳴った。
画面を見るとテヒョンからだった。
もう準備が出来たのかと思って慌てて電話に出たの。
「テヒョン？もうすぐ職場出れるから、少し待ってね。」
「あ…A、ごめん。」
テヒョンのごめんで、もうわかったの。
今日もテヒョンは来ないんだって。約束守ってくれないんだって。
「ごめんA、来週から行く海外の仕事のことで行けなくなっちゃったんだ。」
「打ち合わせ？どうしても無理なの？」
いつもなら簡単に大丈夫だよ、と言えるのに
今日は言えない。ワガママなのはわかっているけれど、今日くらいは私を優先して欲しかった。
でも、次の言葉を聞いて、もう諦めたの。
「打ち合わせではないんだけど…、スアから仕事のことで相談あるってどうしても頼まれて…。スア今回行くところ初めてで不安なのかもしれないから、断れなくって…」
スアさんは断れなくて、私のことは断れるんだね。
「あっ…Aも大事な話あるって言ってたよね。明日なら絶対行けるようにするから！」
明日…それじゃもう遅いの。
テヒョンの絶対って、絶対じゃないでしょ？
きっとまた明日だって同じ。
私より何かを、誰かを優先させて
いつだって私は置いてけぼりにされるの。
私の大事な話よりも、スアさんの相談を…
ううん、仕事のことだもん仕方ないのよね。
テヒョンに何を言っても、テヒョンにとっての私はそれだけの存在でしかないんだよね。
もういい。
もういいの。
テヒョン、もういいよね？
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作者名：kerokero0114 | 作成日時：2021年5月22日 20時
