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ページ17

「寮内で何か言われてたりとかご家族の話とか、何か聞いてませんか」

「知らない」



帰ってきたのはその一言だった。



「そうですか…」

「俺はヒョンジンじゃないし、家族の話はあんまりしないから知らない。寮ではいろいろ思うところがあるやつはいるみたいだけど、あいつ分家とはいえかなり良いところの長男だからね。表立って言うやつはいない」



リノはこちらに向けていた視線を再び猫へと戻した。猫はリノに尻尾の付け根をポンポンと叩かれて満足気だ。



「それに半純血の俺とつるんでるし、周りから良い目で見られてないのは元からだよ。…どうしてそんなことが気になるの」

「…こうなった原因が私だからですよ。前に噂のことを謝ったんですけど、彼は気にしないでって言うんです。でも、私のせいで辛い思いをしてるなら、どうにかしたいじゃないですか」



Aがそう答えるとリノは興味がなさそうにふーん、と言ってローブのポケットから猫用の缶詰を取り出した。マグルのマーケットで見たことのある品だった。



「多分、お前は血とか家の話をゴチャゴチャ考えてるんだろうけど、あいつはそれでも幸せそうだし、後悔してないと思うよ」



リノはそう言いながら缶詰の取っ手に指を引っ掛けて蓋を開ける。匂いに釣られたのか彼の猫はリノの手元を覗き込んだ。

リノは猫がボイルされた魚肉を食べ始めるのを見届けると、再びAに顔を向けた。あまり納得していないのがバレたらしい。彼はため息がちに…まぁ、と言葉を続けた。



「…確かに、あの騒動の前と後じゃあ少し環境は変わったかもね。でも、これはあいつが自分で決めたことだよ。あの場でお前を庇ったのも、言い訳をしなかったのも、噂を否定しないのも、全部ヒョンジンが自分で決めたんだ。お前がそれをゴチャゴチャと悩む必要ない」



Aは心に重くのしかかっていた何かがころんと音を立てて転がり、空いていた窪みにピッタリハマったような心地がした。

彼にはそんなつもりがないのにそうするように自分が仕向けてしまったのではないか。そう言わせてしまったのではないか。

あの夜、ヒョンジンが伝えてくれた愛の言葉を頭では理解していても、心のどこかでそれを信じきれず恐れていたのだ。

ただ純粋に彼を愛していいのか。



「悪いけど、お前より俺のがヒョンジンを見てきた時間は長いからね」



リノはそう言って柔らかな笑みをこちらへ向けた。それはAが初めて目にするリノの笑顔だった。

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BB(プロフ) - マニ。さん» こんばんは。コメントありがとうございます🙇🏻‍♀️恐れ入りますが、当方ボードなどは利用しておりません。マシュマロを開放しておりますので、何かあればそちらにお願いします🙇🏻‍♀️ (2月22日 21時) (レス) id: cf4a94678c (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - BBさん» ✉️。こんにちは!とても面白いです!ハリポタとか大好きなのでスキズも大好きです!もしよろしければ一緒にボードで会話しませんか?これからも更新応援してます💝 (2月22日 20時) (レス) id: 861062e758 (このIDを非表示/違反報告)
BB(プロフ) - えんさん» ありがとうございます🙇🏻‍♀️ (1月29日 5時) (レス) id: cf4a94678c (このIDを非表示/違反報告)
えん(プロフ) - わあもうほんとに好きです、、😵‍💫😵‍💫😵‍💫スキズも好きだしハリポタも好きだしほんと私得すぎます💘💘 (1月25日 21時) (レス) @page11 id: 284b114cd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:BB | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2024年1月16日 4時

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