鷲は蛇と夢をみる

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「ヌナ！どこにいたんですか！」

「ごめん、友達と話してたら止まらなくなっちゃって」



スンミンとアイエンのもとへ帰ると、心配そうな表情を浮かべたアイエンが駆け寄ってくる。なんとなくヒョンジンに会ったとは言いたくなかった。

2人はレイブンクロー生らしくディメンターに会った時の対処法は知っているようで、チョコレートを食べているところだった。きっと彼らもディメンターのせいで酷く気分が落ち込んだのだろう。



「Aはディメンターに出会した？」

「目の前を通り過ぎて行ったよ」

「僕らもリクスヒョンと話している時にディメンターが来て…はぁ、今思い出しても背筋が凍りそう」

「フィリックスが来てたの？」

「はい。ブラウニーをお裾分けに来てくれたんです」

「リクスもかなり気分が落ち込んでたからチョコレートを食べると良いって教えたんだけど、それならチョコレートブラウニーをみんなに分けなきゃってコンパートメントを出て行ったよ」

「今頃各コンパートメントを訪ねて回ってるんじゃないですか？」

「相変わらずね」



フィリックスはハッフルパフ生の心優しい青年で、Aたちとは合同授業でよく話す仲だった。半純血の彼は血統に関わらず、どんな人にも丁寧に優しく接し、よくブラウニーを作ってはお裾分けしてくれるのだ。

あぁ、彼のブラウニーがあったらこの最悪な気分も一瞬で元通りになりそうなのに。惜しいことをした。



「とりあえず、Aもローブに着替えな。カエルチョコでよければチョコレートもあるし」

「うん、ありがとう」



未だ雨は窓を叩きつけている。チョコレートを食べているうちにざわついていた心が落ち着いてきた。

あの恐ろしいディメンターの記憶が少し和らぐと、ヒョンジンのあの優しげな眼差しを思い出す。

そういえば、遠目から彼のことを見たことがあったな。確か図書室の隅で本を読んでいた。人を寄せ付けないような冷徹な雰囲気だったな。ただ単に集中していただけだったのかもしれないけど。

何にせよ、彼があんなにも柔らかな話し方をするなんて思っても見なかった。

栞を挟んだ本を再び開く気にもなれず、ぼんやりと窓の外を眺めながら列車に揺られるのだった。

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