【実|況|者】サイケデリックな風景を 4【短編集】

失恋したから/PP ページ43

また席替えをした
今度は私が彼から見て斜め前のひとつ前
やっぱり話せない

日本史の授業はどうも眠気を誘う
先生の歌は子守唄になった
ついていた肘が机からずり落ちて起きる

まずいまずい
もうすぐテストなんだから起きなきゃ

「A、寝ないで」

後ろから小声の彼の声が聞こえてくる
完全に起きているのがわかってるはずなのに、叱るようなふざけているような口調で

『起きてるよ』

少し呆れたように振り返ればにっこりした
からかわれてるな完全に

そんな間に授業は進み、気がつけばチャイムが鳴った
彼のロッカーは私の机の隣だ
毎日私の机に荷物を置いては、のろのろと整理する

「机貸してー」
『うん』
「さっき寝てたでしょ」
『眠かったの、でも最後は起きてたでしょ』
「僕が起こしたからでしょ」
『それより前に起きてたし』

そんな話をしては笑ってる
わざわざ私に話しかけなくても良いのに

「次は寝ちゃダメだよ」
『いたっ、なにすんの』
「起こした」

にししっ、と笑いながら教科書で私を叩いて席に戻っていった
後ろから見つめているだけも充分苦しかったけど
こんなに話しかけられるのも充分苦しいじゃないか
じんじんと痛む頭を抑えながら、赤くなりそうな顔を伏せた

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