【実|況|者】サイケデリックな風景を 4【短編集】

グリコの涙/Uszw ページ15

久しぶりに帰省をした
周りの風景は変わってしまっていて
時が過ぎるのは早いと身に染みて感じる

「なんだ、まだあんじゃん」

小さい頃に遊んでいた神社
長い階段を登った先にある鳥居

確か、あいつとグリコしてたっけな
夕方になって帰る時は決まってそうだ
どっちかが地面に着けばゲームは終わり
家に帰る合図だった

『あれ？牛くんだよね』
「…A」
『久しぶり、こっち帰ってたんだね』
「おう」

神社の前に座って街を見下ろす
あの時はあんなに綺麗だった夕日も、ビルに阻まれて見えなくなってしまった

『彼女、いるんだってね』
「まぁな」
『そっかぁ、私は好きだったんだけどな』

牛くんのこと
その言葉が耳にこびりついた
なにか、胸騒ぎがした
あの夕日は良くない
帰らねぇと、やばい

「俺、もう帰るわ」
『ねぇ、グリコして帰ろうよ』

目が逸らせない
自然と手が動いている

『グリコのおまけ』

「パイナツプル」

「グリコのおまけ」

『チヨコレイト』

「グリコのおまけ」

『チヨコレイト』

俺のが1段進んでる
あと数回で下に着く
ちょっとした安堵感に油断をした

『ねぇ、牛くん。もう終わりにしよう』

前に向かう力に反することなんて出来なくて
俺は下まで転がり落ちた

どちらかが地面に着けばゲームは終わり
頭を地面に着けてしまえば人生は終わり

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
私"は"好きだったんだけどな

ってのは、昔の無邪気で本心で話してくれるうっしーが好きだったってことですね

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