君がいい Kento.N (ページ15)

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「N？」

考えるように空を見上げる長尾くん。

私みたいな女子高生が好きになれるほど歳の近いバイトの人はかなり数少なくて。

イニシャルだけでもすぐに分かっちゃう気がして、私は赤くなりそうな頬を両手で挟む。

やっぱり、言うんじゃなかったかもしれない。

「あ！」

急に笑顔になった長尾くん。

「Nってもしかして！それってもしかして、俺＿＿」
「えっ」

なにか言いかけた長尾くんを遮って私は声を上げた。

頭が真っ白になって、うまく声が出なくなる。

「ん？日菜ちゃん？」

心配したように顔を覗き込んでくる長尾くん。

必死に自分を落ち着かせた。

「嘘、じゃない………」

長尾くんは急に顔色を変えた私を心配して私の視線をたどる。

「……あ、大吾先輩、やん」

私達の視線の先にいたのは、一人の可愛い女の人と手を繋いで笑顔を見せる大吾先輩だった。

.

「……日菜ちゃんの好きな人って」

答えがわかった君は遠慮がちに尋ねてくる。

「西畑大吾、先輩なん？」

「そう、だよ」

大吾先輩のN。

もう隠しきれなかった。

私と同じように黙り込んでしまう長尾くん。

二人のときはいつもにぎやかにしてくれる長尾くんが静かになってしまうといよいよ本当に静かになってしまう。

……帰りたい。

自分勝手でごめんね、長尾くん。