君がいい Kento.N (ページ11)

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#four. ページ11

「日菜ちゃん、11月のシフト希望出した？」

大吾先輩と二人でバイトに入った日から一週間が経った。

あれから先輩とは一度も会えていない。

今日もいつもどおり、長尾くんとのシフトの日。

「そういや出してへんわー。長尾くんは？」

「俺もまだやねん！どうせなら日菜ちゃんとがええなって思って！」

「えぇー。寂しがりやなぁ」

「また弟みたいって言うんやろ！」

「可愛い」

「可愛いばっかやん。たまにはかっこいいって言ってや」

「かっこいいかぁ、それはないかなぁ」

長尾くんは『弟みたい』というと怒る。

他の先輩が言ってもそんなに怒らないのに。

　
「俺にもかっこいいとこ、あるよ？」

「……うん」

不意に真剣な顔で私の眼を正面から見つめて言うものだから、慌てて目をそらした。

「そうや、11月2日！この近くでお祭りあるやんか。もし良かったら行かへん？」

　

いつもの笑顔に戻った長尾くんはそう言ってあざとく首を傾げた。

「うん、良いよ」

なんだか断ることができなくて、断る理由もなくて、私は反射的に頷いた。

「よっしゃ、バイト頑張ろ!!」

分かりやすくやる気が入った長尾くんは、来店したお客さんに向かって

　「へいらっしゃいませ！」

と商店街の魚屋のおじちゃんのような威勢のいい挨拶をした。