名も知らぬあの子 .。 (ページ16)

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謙太郎 s i d e ページ16

そのまま、何事も無くライブは終わった。
一発決めたるJも成功したし、誰も怪我無く無事に終われた。

ふと、今日来たあの子の事を思い出す。
..可愛かったなぁ..

北「あの泣いてた子？
確かに、やっさんの好みっぽいよね。」

謙「えっ！？」

北「やっさんの心の声、聞こえてました笑」

謙「まじか..」

北「俺は、ずっと気になってる人いるよ。
ファンの子でさ。」

謙「北斗も..いるんだ？」

北「うん。
でも、その子さ、俺が出てる時は
いっつも来てくれないの。」

謙「どういうこと..？」

北「俺がその子に会った事あるのは、
慎太郎が出てる時の公演なんだ。」

謙「じゃあ、その子は慎太郎のファンって
いうこと..？」

北「..分かんない。
でも、俺がいつも会うのは、他の奴の公
演に見学行った時だけなんだ。」

謙「そっか..」

北「だからさ、やっさんはあの子の事、
離しちゃダメだよ。
その子とは、今日しか会えないかもしれ
ないんだよ？」

謙「..」

北「俺はさ、好きな子が俺の担当じゃなくて
すごい悔しいの。
でも、やっさんの好きな子は、やっさん
のファンなんだから、手放しちゃダメだ
よ。
今日会えた事、大事にしなきゃ。」

謙「北斗..」

北「..この後のミーティングとか打ち上げと
かは、適当に言っとくから、早くあの子
追いかけなよ。」

北斗が言い終わるか終わらないかくらいのタイミングで、オレはもう私服に着替えて控え室を飛び出していた。

謙「さんきゅー、北斗！」

と叫んでから。
振り返る前に見えたのは、寂しそうに笑う北斗の姿だった。