64話 ページ15
Aside
A「うそ……」
短髪の青年は伊藤さんではないか。
トレードマークのツンツン頭は、ばっさりと切られていた。
A「伊藤さん、なんでここにいるの⁉」
慌てて駆け寄れば、にっこりと笑いかけてくれた。
A「髪の毛もいつものツンツンじゃないし、車椅子だし……
っていうか、リハビリは?
明後日まで、検査入院なんじゃ……」
頭と気持ちがバラバラに動く。
嬉しいのと、なんでいるのかという疑問が、ごちゃごちゃになっていた。
伊「Aちゃんのライブを観に行くって約束したでしょ?だから、橋本さんとお医者さんにお願いしたんだ。ちゃんと歩けないから、車椅子じゃないとダメって言われたけど…」
三「それによ、コイツ、髪の毛が清潔じゃないからって、切られちまったんだ!
うに頭じゃなかったら、フツーの人過ぎてよ〜
さえねーやつ〜」
理「こら、三ちゃん!そんなこと言わないの!」
なんか、元気そうでよかった。
三橋くんと言い合いをする伊藤さんを見て、自然と笑みがこぼれる。
今にも三橋くんに掴みかかりそうな伊藤さんの肩をそっと叩いた。
A「来てくれて、ありがとう!」
伊「はぁう♡ Aちゃんのドラム叩いてるとこすっごく、可愛かったよーーー♡もっともーーーっと好きになっちゃったぁ♡」
A「伊藤さんだって、短い髪の毛、すっごく似合っててかっこいいよーー♡
私も、大好きーーーーー♡」
伊「わぁぁぁ///」
A「きゃぁぁ///」
理/三「………来るんじゃなかった……」
理子ちゃんと三橋くんが冷めきった目で見てるけど、そんなの気にしない!
伊藤さんがいる幸せを目一杯噛みしめた。
安田「ねぇ、Aちゃん。この人が彼氏さん?」
A「そう、だけど…」
自分でも声が硬くなっているのがわかる。
安田「あのね〜、Aちゃんに文化祭の準備を任せて帰っちゃってぇ、ごめんねぇ〜
彼氏さん、大変だったんでしょぉ〜?
でもさぁ、Aちゃんが教えてくれなかったからぁ、私達は帰っただけなのにぃ、スケバンのお友達を使ってぇ、殴るなんてひどくなぁい?」
大きな声だった。
伊藤さんにも三橋くんたちにも聞こえた。
ニヤニヤと笑って私を見る安田さんは、少し不気味だった。
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作者名:伊沢環子 | 作成日時:2019年1月14日 3時