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冷房の音に紛れて、穏やかな寝息が微かに聞こえてくる。
長い睫毛が影を作り、少し幼い印象を受ける無防備な寝顔ですやすやと。
長い手足を華奢な体を猫のように丸め込むのはきっと、彼女にとって落ち着く体勢なのだろう。
「きもちよさそーに寝ちゃって…」
逆じゃない?寝るとしたらさ
…なんていう俺の呟きは規則正しい寝息を乱すことは叶わなくて
いや良いんだけど
起こしちゃったらそれはそれで悪いし
「ふぁ…」
釣られたというのか何というのか、とりあえずせり上がってくる欠伸を我慢する理由は無い。
どことなく乗っかってくる眠気を自覚しながら、眠る彼女のもっと近くへと。
タオルケットへ手に取って、主に彼女にかけてやる。枕は……まぁ無くても別に良いか。
ベッドの上だし、どこかを痛める心配も多分無い。もし痛めたとしても、笑い話にでもすれば良い。
熟睡しているのか起きる気配の無い彼女の髪を撫でる。どことなく、表情が和らいだように見えて此方も釣られて頬が緩むのを感じた。
『き、しょー…、』
夢に微睡む彼女が微かに俺の名を呼んだ。
消え入るような声で、実際最後はほぼ聞こえなかった。
「…ずっりぃ
俺が起こせないの分かっててやったなー?」
滑らかなほっぺたを軽くつまんでやれば
ぎゅっ、と眉を寄せて不快そうな面持ちに。それと一緒に口もきゅっと閉じているのがちょっと面白い。
それに声を抑えて一頻り笑って(こっそり写真を撮って)からもう一度サラサラとした髪に指を通す。
露わになった小さな額に唇を落とす。
「お休み、良い夢を」
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