26日目 ページ21
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『おつかれ様でしたー』、とブースから一歩出てしまえば今日のお仕事は終わり。今日の夕飯はどーしたもんかなー、てかまずなにがあったっけか。
長らく同じ格好しててすっかり凝り固まった体をゆっくりと伸ばす。
『…お』
ひょこっと休憩スペースから見慣れた人物が顔を覗かせた。
そんな彼と視線がかち合えば、パァッと表情が華やいだように見える。カワイイ。
…すごい綺麗なモデル歩きなのすごいギャップあるな。
「終わり?それとももうちょいかかりそ?」
『うーうん、もう終わり。
にしても待っててくれたの?寒くなかった?』
「全然?むしろちょっと暑いくらい」
『ソッカァ』
日中はあったかいにしても、時間帯的に日が沈み始めた頃合い。今の今まで密室に居たからそうでもなかったが、ブースを出てみると案外肌寒い。そんな中待ってたなら…と思ったけど杞憂だったらしい。
まぁ、だろうとは思ったけどさ。
「んふふ、おつかれ様ぁ〜」
『おっと、と…んー、紀章さんもねー』
ゆるっゆるな笑みを浮かべて抱き締めてくる彼の背中へと手を回す。首元に擦り寄れば、いつもの淡い香水の香りが鼻を掠めた。
「ありゃ珍しい甘えん坊だ」
『んー…今日はちょっと堪えた…
リテイクで雰囲気がさ…』
「あー…」
こだわりが強い監督ってのは珍しか無いけれど、やっぱり回数を重ねれば重ねるほど段々と…っていうやつ。
大分慣れてきたにしても今回のは結構キツかった。
『雰囲気が重苦しくてかなわんくてなぁ
出番はもう無いから出て来ちゃったのさ
ま、それはそうとして。何かあったの?』
「んーん、俺は別に。順調に終わったし
一緒に帰りたいなーって待ってたの」
『えぇ…好きぃ…』
「俺も〜♡」
どうしよう、めっちゃバカップルやってる。
自覚はあるけど仕方ない。こういったのは開き直って素直に口に出しとくに限る。
「ねぇ奥さん。」
『はぁい』
「奥さんさえ良ければなんだけど
帰りがてらにデートと洒落込みません?」
『え、行くっ!!』
「ふふっやったぁ」
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