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『あ゛っつ…』
こもる熱気に意識が覚醒させられていく。
纏わり付くようなそれが不快で、冷たい場所を求めては寝転がっていたが、そろそろ限界。
いくら手を伸ばして這わせても、同じような熱を拾い上げるだけでどうしようもない。
身体を捻って布団を蹴り飛ばせば、火照る身体に丁度良い冷気が肌を撫でる。
…と共に、汗で濡れた衣服の不快感がハッキリとした。
…もう良い。起きることにしよう。
どうせもう暫くは寝れないのだし。
時計は12時前を指し示す。
紀章さんに絡みまくって何だかんだ言ったが、寝落ちて今の今まで寝ていたらしい。
汗で湿る布団を更に蹴り飛ばした。窓も全開にしてやろうかとも考えたが、なんて事でしょうめっちゃ雨降ってる。
後でファブろ。
湿る服と下着を脱ぎ散らかしてやりたい思いを抑えつけ、クローゼットを開け放つ。
手近にあった下着と聞くところによると数万とかするらしい彼のシャツを拝借。無断だがそこはそれ、妻ってのと病人って事で大目に見て貰いたい。
幸い身体はそんなに怠くない、頭痛や腹痛倦怠感も特には。
立ち上がっても歩き回ってもフラついたりも目眩も無し。
…何というか、熱があったからずる休みなんかじゃないんだけど分かっててもサボってる感があって妙な気分。
『〜♪』
素足で家の中を歩くときの音。
絶え間なく雨粒が屋根を叩く音
やけに大きく感じる扉を開く音。
雨の日特有の薄暗さを湛えた家の中を進む。
何気ない動作や要素なのに遠い昔の台風だか大雨だかで休校になったような非日常感に包まれている。
『雷落ちるかな』
そう呟いては少し胸が高鳴る私が居る
あの音が怖いという人達も居るから声を大にして言うのは憚られるが、嫌いじゃない。
いつか見た土砂降りの雨の中、重たく黒い雲を裂くように轟き輝くのが美しく感じたからかも知れない。
あの時と違ってあたりは住宅があってちょくちょくビルが建ってるけど、どうだろうか見えるのだろうか。
『あー…』
窓に張り付いて、重たげな雲を見上げて降り注ぐ雨を見て
そこでようやく思い出して声を漏らした。
やっぱ落ちなくていいや、雷。
『シャワー浴びよ』
だって愛すべきビビリな旦那さんが怖がっちゃうから。
それはちょっと、ね。
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