7時間目 困惑 ページ8
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「最近あんたと白川揉めないね、何、仲直りしたの?」
「……うーん、何というか、『拗れた』って感じですかね……」
友人からの問いにそんな曖昧な返しをすれば、
目の前の彼女は要領を得ないように小首を傾げた。
嗚呼、無理もない。何せ当の本人である私ですら要領を得ていないのだ。
*
――――あの保健室での告白ともとれる奴の発言から既に一週間が経過していた。
あれ以来、奴からの接触はない。
前までうんざりする程マウントや嫌味のオンパレードだった奴は見る影もない。
怖いくらいに静かだ。
言い方を変えれば私の生活に平穏が訪れたとも言えるのだが。
「――――あれ、1人?白川は?」
「最近あんたらの喧嘩見てないね、クラスが静かだわ」
「え、お前らついに和解したの?事件じゃん」
――――この一週間、クラスメイトの口から出るのは白川奏多の名前ばかりだ。
そんなに私と奴は一緒にいただろうか。
……いや、違うな。奴に友人がいないのが要因か。
奴とロクに会話できる人間などこのクラスには……、いやこの学校にいるかも怪しい。
そのくらい白川奏多という人間は周りから距離を置かれていた。
まああの物言いと不遜な態度からして当然ともいえるが。
――――だから、今の奴は1人だ。
いや、奴がぼっちなのは今に始まったことではないし、
そもそもそうなったのは本人のクソみたいな性格のせいなので自業自得であるのだが。
『俺が、お前のことを好きだったら、お前はどうするんだ』
奴の言葉が頭の中でぐるぐると反復する。
どうする、どうするって、なんだ。そんなの私が聞きたい。
そんな素振り今まで一度も見せてこなかったのに、急にそんなこと言われたって困る。
好き、好きって何を?奴が私をだ。
奴が、白川奏多が、私のことを好いている。
その事実のせいでこの一週間、平穏を手にしたはずの私の頭から奴が離れることはなかった。
嗚呼、本当に奴は厄介な男だ。
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綾木 麗(プロフ) - めっっっちゃ好きです(語彙力) (2022年11月6日 23時) (レス) id: 5a575a9999 (このIDを非表示/違反報告)
ぴのいちご(プロフ) - 夜澄ソラさん» お褒めの言葉頂き嬉しいです……!元々自己満足で自分の好きな物を詰め込んだだけのものなので好き嫌いは別れても致し方ないのかななんて思います、コメントほんとにとっても嬉しいです、ありがとうございます! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
ぴのいちご(プロフ) - 颯貴さん» 初めて長編小説を書かせて頂いたのですがそう言っていただけてとても嬉しいです……!これからもゆるゆる更新させて頂きますのでよろしくお願い致します……! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 30f259b2ae (このIDを非表示/違反報告)
颯貴(プロフ) - 夜澄ソラさん» ほんとにそれ。(あっFF外から失礼します)なんでこんな低評価なん?理解できないんだけど (2021年1月5日 23時) (レス) id: b9ddb7cad4 (このIDを非表示/違反報告)
夜澄ソラ(プロフ) - 一気に読んでしまいました。こんなに評価が低いのが理解できないくらい面白かったです……!続きも楽しみにしています! (2021年1月5日 23時) (レス) id: 1c9f7aabed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴのいちご | 作成日時:2021年1月3日 12時