[d!]我々と4年目の第1歩を。[建国記念] (ページ13)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:15,273 hit

白桜が咲く頃に追いつくから/ht ページ13

「今年も咲いたね」

そう言い、桜の幹に触れる彼女。嬉しそうに微笑んで桜を見上げる。俺よりひとつ歳上のAはこの高校を卒業したばかりだった。白桜のような色のスカートで学校を見学する姿に在校生は釘付けになっていた。帰ろうと教科書などをバッグに入れてるとクラスメイトに呼ばれた。廊下に出ると卒業したばかりのA。卒業式に咲かなかったこの高校の桜を見に来たらしい。そのついでに部活の後輩に会いに来たのだとか。俺はついでか、て思ったがそれでも嬉しいものは嬉しい。本当に好きな相手だったし。

「Aってどこの大学行ったんだっけ」

「A先輩って言いなさい、ここから結構あるとこ、私上京したの」

憧れの都会だよ、と笑う彼女にため息をついた。卒業前は一人暮らしがこわいと言っていたのに。じゃあ今日はわざわざこっちに来たのか。ご苦労なこった、と笑うと彼女もつられて笑ってしまう。

「明日にはもう戻るかな」

この地域を離れるのは寂しいけど、でも楽しみだったりするの。無邪気に言う彼女に不安という文字は一切浮かんでいない。明日に戻るのなら、気持ちを伝えられるのは今しかない。

「A、好き」

「そんなの前から知ってたよ」

俺の話を遮りくすくす笑うAに頬が赤くなる。知ってるなら、わざわざ言わなくてよかった。付き合ってくれないか、と付け足そうと口を開くとAがくるりとシフォンスカートを揺らして一回転した。

「ひとらんのこと、待ってるね。遠距離恋愛なんてごめんだよ？だから、はやくこっちに来てね」

大人っぽい笑みを浮かべてそう言う彼女に肩を竦め、こう返す。

「この桜が咲いた時に、追いつくから」

だから、まってろよ。逃がしてなんか、やらない。来年の白桜が咲いた頃、俺はAの隣にいるはずだから。