金ト翠、中身ハ ページ20
「………」
「………ﾁｯ」
『悠真舌打ちしないで。』
「…してねぇ。」
『子供じゃあるまいし…』
「あ゙？」
いかにも不機嫌です、という顔でこちらを睨みつける悠真。そして、その向かい側で、同じくこちらにジト目を向けてくる──乱歩さん。
『与謝野さん、本当に初対面なのよね？この２人。』
「乱歩さんもそう言っているんだけどねェ……どうも
悠真と乱歩さんは初対面であり、まだ会話すら交わしていない……はず。にも関わらず、いつもより鋭い目つきでお互い無言で睨み合い、火花を散らしているのである。
トラ男君がよく、顔は整ってるのに目つきが怖いと言われるのはこういうことだろう。前世から変わらないのね。
ふいに、棒付き飴を舐めながら、なおも翠の瞳を鋭く光らせる乱歩さんの後ろに、社長が立った。
「乱歩。」
そしてなだめるように、名前を呼んだ。
「………はいはい。」
拗ねた様子を見せながらも、乱歩さんは小走りで社長の後ろに隠れ、見えなくなった。
『悠真。貴方、探偵社と協力関係を結ぶと言ったじゃない。少しは友好的に………いいえ、やっぱりしなくても良いから、その猫みたいな威嚇は止めて？』
トラ男君の金の瞳の瞳孔が、今にも猫のようにキュッと細まるのではないかと思い、帽子をその目元まで深く被らせた。
『猫用の首輪をご所望？』
「いらねぇよ。」
『あら残念、似合うものを選んであげるのに。』
「似合ってたまるか。
不機嫌の向く先が、乱歩さんから自分へと移ったのを肌で感じ、そっと息をついた。
その後しばらくして、社長から探偵社の動向を聞いた。今、この場所──晩香堂に居ないメンバーは、ポートマフィアと
『今はポートマフィアに事務員を人質に取られ、それを救出中なのね。私達はどうすれば？』
「太宰と敦に増援かな。ポートマフィアが何か仕掛けてくるっていうのは分かりきってるから、一応。」
地図とメモを受け取り、出口に向かう。寸前で振り向き、言った。
『乱歩さん、悠真のどこが気に食わないのか教えてくれれば少し改善して、』
「いや、無理だね。」
『え？』
「僕と彼が相容れないの、同族嫌悪が理由だから。なーんかお互い……うえっ、て変な感じがしてるんだよね。」
珍しく言葉を濁す乱歩さん。悠真も頷いている。
与謝野さんと私は目を合わせ、苦笑した。
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作者名：ミカン酢 | 作成日時：2022年10月22日 16時
