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増援ノ足音 ページ15

倒れ伏す敦君に駆け寄ると、どこからともなく、たくさんの車のブレーキ音がした。

音源は、私達のすぐ近く。何十台もの真っ黒な車から。…ポートマフィアの、増援ね。

『人が居ないからって、ずいぶん好き勝手に…』
「もし人が居たとしても、何も見なかった事にされる。」

小さく呟くのは、真っ青な顔をした鏡花。

『余計な事を喋られる前に始末する、と?』
「……」

──もう、逃げられない。

鏡花の凍りついた表情が、そう物語っていた。

そうこうしている内に、全方位から機関銃(マシンガン)の先を向けられた。人数は、ざっと30人から40人。

さっきみたいに制圧するのは簡単だけど、どうせこの人たちを倒した所でまた増援が来る。

尾崎さんの操る夜叉の攻撃も、銃弾も、無線機も無効化できるような便利な異能なら良かったけれど、残念ながら私の異能はそうじゃない。

そしてその内、尾崎さんレベルの強者(つわもの)が何人もやって来るかもしれない。

そうしたら──、

「ち、千咲さん、」
「ッ……」

怯えた目をした敦君。トラウマが蘇っているのか、これまた怯えた目の鏡花。
そして…出血が酷くて、意識が飛びそうな私。

『大、丈夫。大丈夫よ、2人共。』

ぼーっとして、何も考えられなくなりそうな頭で、ようやく絞り出したその台詞が、チープな映画にでも出てきそうなほどありきたりな事に、少し、落胆を覚える。

『忘れないで。武装探偵社員は、いつ何時でも仲間を見捨てない。』

腕を交差させて、息を吸った。


「──頭下げてくださ〜い、」


場の雰囲気に似合わない、のんびりした声。その声と共に飛んできたのは、大きなシルエットの…

『車!?』

車体が飛んでいくのを眺めながら笑う少年。

そこに立っていたのは、賢治君だった。

『怪力の異能者だったのね。それも、飛びっきり強力。』

のんきに手を振る賢治君の後ろから、国木田さんが駆け寄ってくる。

「大丈夫か2人共、」

さっきまでの勢いはどこへやら、力が抜けてしまった。膝から地面にくずおれる。

「千咲さんっ、」
『ごめんなさい、血を…流しすぎた、みたい、』
「く、国木田さん、どうすれば…ってうわ!?」

倒れていた敦君を、国木田さんが無言で引っ張って立たせた。

「落ち着け。そして立て。いつまで守られているつもりだ。

──刺されても起き上がる根性骨(タフネス)が、人虎(じんこ)の売りだろう。」
『フフッ、』


…ゆるり、目を閉じた。

予想外ノ者達→←逆手ニ取ラレテ



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作者名:ミカン酢 | 作成日時:2022年10月22日 16時

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