増援ノ足音 ページ15
倒れ伏す敦君に駆け寄ると、どこからともなく、たくさんの車のブレーキ音がした。
音源は、私達のすぐ近く。何十台もの真っ黒な車から。…ポートマフィアの、増援ね。
『人が居ないからって、ずいぶん好き勝手に…』
「もし人が居たとしても、何も見なかった事にされる。」
小さく呟くのは、真っ青な顔をした鏡花。
『余計な事を喋られる前に始末する、と?』
「……」
──もう、逃げられない。
鏡花の凍りついた表情が、そう物語っていた。
そうこうしている内に、全方位から
さっきみたいに制圧するのは簡単だけど、どうせこの人たちを倒した所でまた増援が来る。
尾崎さんの操る夜叉の攻撃も、銃弾も、無線機も無効化できるような便利な異能なら良かったけれど、残念ながら私の異能はそうじゃない。
そしてその内、尾崎さんレベルの
そうしたら──、
「ち、千咲さん、」
「ッ……」
怯えた目をした敦君。トラウマが蘇っているのか、これまた怯えた目の鏡花。
そして…出血が酷くて、意識が飛びそうな私。
『大、丈夫。大丈夫よ、2人共。』
ぼーっとして、何も考えられなくなりそうな頭で、ようやく絞り出したその台詞が、チープな映画にでも出てきそうなほどありきたりな事に、少し、落胆を覚える。
『忘れないで。武装探偵社員は、いつ何時でも仲間を見捨てない。』
腕を交差させて、息を吸った。
「──頭下げてくださ〜い、」
場の雰囲気に似合わない、のんびりした声。その声と共に飛んできたのは、大きなシルエットの…
『車!?』
車体が飛んでいくのを眺めながら笑う少年。
そこに立っていたのは、賢治君だった。
『怪力の異能者だったのね。それも、飛びっきり強力。』
のんきに手を振る賢治君の後ろから、国木田さんが駆け寄ってくる。
「大丈夫か2人共、」
さっきまでの勢いはどこへやら、力が抜けてしまった。膝から地面にくずおれる。
「千咲さんっ、」
『ごめんなさい、血を…流しすぎた、みたい、』
「く、国木田さん、どうすれば…ってうわ!?」
倒れていた敦君を、国木田さんが無言で引っ張って立たせた。
「落ち着け。そして立て。いつまで守られているつもりだ。
──刺されても起き上がる
『フフッ、』
…ゆるり、目を閉じた。
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作者名:ミカン酢 | 作成日時:2022年10月22日 16時