日常 ページ34
「えー、ここの表現から、この俳句を詠んだ者の気持ちを把握でき…」
教室に、古文の先生の声が響く。生徒たちは、真面目に話を聞いている人と、そうでない人に別れていた。
彼らと会うのをやめて一週間が経つ。彼らと出会う前と、なんら変わらない日常が戻ってきた。
先生の話を聞きつつ、ぼおっと窓の外を眺める。授業終了のチャイムが鳴り、皆楽しそうに話を始める。
私の心はからっぽのようだった。これを、人は “寂しい” というのだろう。以前家族に気にかけられなくなったときと同じ感情。最も、そのときはすぐに無くなったけど。
あの日、家に帰ってから涙が止まらなかった。そして苦しかった。こんなに悩むなら、初めから会わなければ良かったのではないかとも思った。
いや、それは違う。彼らと過ごしたときは、私にとってかけがえのない時間だった。それは間違いない。
ため息をつき、次の授業の準備を始めた。すると、廊下が騒がしいことに気がついた。
「キャー!!!」
「来るな！ 生徒は教室に入りドアを閉めろ!!!」
驚いて逆に廊下に飛び出ると、包丁を持った同級生が数名暴れまわっていた。何故だ？ まさか、妖怪か何かにとり憑かれているのではないか。
「ちょっと葛さん！ 出ちゃダメ！」
「葛！ 戻れバカ！」
教室から生徒の声が聞こえたけど、誰かがドアを閉めたためもう戻れなくなってしまった。
ああ、そういえば彼らは以前から様子が不安定そうだったな。だからだろうか。こんな状況でも、不思議と私は冷静だった。
彼らは、他の生徒や先生には目もくれず、私の姿を確認すると包丁を両手で構え走ってきた。まずい！ 逃げないと…
階段に向かい下に降りようとしたが、下からも一人包丁を持ったやつが来た。これでは降りられない。歯噛みしながら上に向かった。
屋上の扉は開いていて、私は勢いよく出た。空はなんともいえない快晴で清々しく、逆に憎らしかった。
彼らはまだ追ってくる。私は後ずさりし、背中にフェンスが触れた。もう逃げられない。
せめてと思いどうにかフェンスをよじ登り、反対側に降りた。やつらは血走った目を向けてくるが、こちらに来る気配はない。
下を見ると、当然だがものすごく高い。今更足がすくみ、恐怖が湧いてきた。下では、先生が騒いでいる。ああ、やってしまった。
ふと、私の体が軽くなった。ふわりと、中に浮くような感覚。
バランスを崩し落ちたのだと気がついたときは、もう遅かった。下から悲鳴が聞こえる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スプラMOMIZI(プロフ) - kirakirastar7さん» はじめまして。わー、ありがとうございます！！次回作は未定ですが機会があればまた作りたいです。 (2020年1月14日 16時) (
レス) id: e49f68cb2e (このIDを非表示/違反報告)
kirakirastar7(プロフ) - 妖聖剣と高校生。とても楽しかったです(o^^o)次の剣武魔神夢、期待してます (2020年1月13日 21時) (レス) id: a25d14debe (このIDを非表示/違反報告)
スプラMOMIZI(プロフ) - カンコクさん» ありがとうございます(*´ω｀*) (2019年10月26日 20時) (レス) id: e49f68cb2e (このIDを非表示/違反報告)
カンコク - 続きだ早くよみたいです (2019年10月26日 13時) (レス) id: 7ac3401ee1 (このIDを非表示/違反報告)
スプラMOMIZI(プロフ) - エンゼルフレンチβさん» コメントありがとうございます！朱雀かっこいいですよね〜、私は剣武魔神みんな好きです(*´ω｀*) (2019年10月13日 9時) (レス) id: e49f68cb2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
