Vol.28 ページ29
こっからだ！俺はこっから！
俺はここで、一番になってやる!!!!
口では強気な事を言ってたけど、
その顔は今まで見たことのないほど歪んで、
大粒の涙がこぼれていた。
出久もオールマイトも行ってしばらくしてから出て行ったから、泣いていた事を知られていないつもりらしい。
でもその目は潤み､腫れていた。
今もいつも通りに振る舞っているけれど、きっとツラいはずだ。
その証拠に、繋いだ手にいつもより力が入っている。
「……お前んち、寄っていいか」
「うん、いいよ」
「泊まってもいいか」
「それはダメ」
「何でだよ！お前どうせ一人暮らしのクセ に!!」
「一人暮らしだからだよ!!誰かさんに襲われるか もでしょ!!」
「だ、誰がお前なんかと!!」
図星だったな高校生男子。
慰めるよりお灸のほうが先か。
「お前なんか？私ってそんなもんなの？
はいはい分かった。もう知らない」
手を放し、距離をとってみる。
勝「なっ……！」
私の部屋の前に着いた。420号室。
勝己の誕生日。ソッコーで覚えれた。
「おい……悪かったって」
いつになく弱々しい声でそう呟き、後ろから抱きしめてきた。
「Aがいねえと、生きていけねえ」
絞り出すような声で言うもんだから、罪悪感が沸いてくる。
「じょ、冗談だって。真に受けないで」
「ホントか……？」
「ホントホント。ぜんぶ冗談」
「言ったな？」
急に元気な声に戻り、ニヤリと笑ったかと思うと、今度は甘い声で
「襲うな、も冗談なんだろ？」
と囁いて、耳に舌を這わせる。
「んああ……」
「お前……耳っ……ﾊｱ…弱ェな……」
「んん……やめ、てっ……かぁ……つきぃ…」
「泊まっていいって言うまでっ……やめ、ね え……ﾊｱ…」
吐息混じりに囁かれて、つい答える。
「いいから……泊まって、いいからっ……人 に……見られる……」
「わかった」
「んっ」
彼は、もう溶けてしまいそうな私の耳を優しく噛み…………
甘く、低く、甘く、囁いた。
「………続きは部屋で、な……？」
本当に､ズルい男だ。
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作者名：ろうそく x他1人 | 作成日時：2019年2月10日 22時
