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質問です。 ページ12

「好きな人は、誰ですか?」

授業中。隣の席の人に、表情も黒板へと向ける目線も何一つ変わらないようにして言った。


突然だけど、私は人に質問をすることが好きだという少しズレた趣味を持つ。
この学校では席替えの回数は一年に一回。つまり私は一年に一回、この学校で隣の席に座った人をずっと掘り下げていくのだ。

もちろん、他の人にも質問はするけど圧倒的に隣の人への質問が多い。
隣の人には迷惑かもしれないけれど私のライフワークを奪われるわけにもいかないので我慢してもらおう。

そんな思いで席替えをした。窓際の席なので、隣の人は一人。少し残念だったけれど、まあそれはいい。

隣の人は赤葦。あまり喋ったことがないので掘り下げる事はたくさんあるからわくわくしていた。

「よろしくね、赤葦」

ちなみに私は基本名字呼び捨て派である。

「うん。よろしくね、苗字さん」

…彼は敬称をつけるタイプだったようだ。

「では赤葦。突然ですが質問です」
「突然だね」
「得意な教科は何ですか」

…あれ。

テンプレートに沿ったような質問。こんな質問をする事はあまりないけれど、口から出てしまったものは仕方がないので話を続けた。

「数学とかが得意かな」
「そうなんだ。私は古文と現代文だけはできるよ」

まただ。いままでの会話で私は自分を出すことなどなかったのに。
違和感だ。

それが初めての会話なので、もう十二月になる今日まで相当の質問をして来ただろう。

彼に質問をすると調子が狂うことがある。
顔色一つ変えずに出来ていたはずの質問をためらうことがあったり、答えてくれるだけで心が弾んだり。

恋、というのかもしれないこの想いは意外にも膨らんでいたようだ。

そんな面倒な想いを抱え込んでしまったおかげで質問が思うようにできない。癪だ。

「ライフワーク奪われた…」

整っている顔立ちとか、バレー部の副主将をしていることとか、優しいところとか、空気が読めるところとか。

「好きだなぁ…」

「苗字さん?」
「うわっ…びっくりした…」
「何でびっくりするの…今日、質問しないの?」
「え」

それをまさか赤葦が言うとは。

「質問しないなら、今日はこっちから質問していい?」
「へ」

間抜けな声しか出ない。

「いいけど…」

私のことを知ったところでメリットなんてないと思う。

「貴女のことが好きなんですけど、貴女の好きな人は、誰ですか?」

静かに、授業の片隅で「赤葦」と言う回答が響いた気がした。

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作者名:言ノ葉 x他1人 | 作成日時:2017年11月20日 0時

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