甘い吐息に愛をこめて ページ1
ただワインを飲む姿が素敵だと思った。
哀しそうにどこか淋しそうに、淡い照明の下でワイングラスを傾ける彼女に何故か目が逸らせずにいた。
「仕事人間って、男性ウケ悪いんですね。まぁ、分かってたことですけど」
別に酒が飲みたかったわけじゃない。ただ何となく、なんとなく入ったバーで見知らぬ女性の失恋話を聞く。
端から見ればおかしな光景だ。顔を合わせて数分の女の失恋話を、たまたま入ってきた男が聞くなんて。
「別に男がみんなそういうわけじゃないと思いますけど」
「じゃあ、私に男を見る目が無いってことですかね」
なんであんな男好きになったんだろ。そう呟くと、またグラスに口をつける。
その光景を見ていると、俺の元にもグラスが届いた。彼女の飲んでいるのとは違う。ただのウイスキー。
「あなたならどうします?」
グラスを揺らしながら俺に聞く。中のワインは揺れに身を任せながら揺れる。
「どうするって、何をですか?」
コースターの上にグラスを置きながら、質問に質問で返す。何を聞かれるのだろう。
「仕事優先でデートの約束も平気で破っちゃう女と、無理してでも仕事断ってデートしてくれる女。アナタならどっちを選びます?」
「出会って数分の女の失恋話を、表情一つ変えないで淡々と聞いてる優しいおにーさん」
店内に流れていたBGMが途切れる。それと同時にウイスキーを冷やす氷が溶けカラリ、とグラス内で音を立てる。
彼女はBARテーブルにヒジを付き、手を頬に当てながら俺を見ていた。表情は笑っている。
その姿が、俺にはひどく妖憐に、そして儚く見えた。
目はその表情とは裏腹に、私の望む答え以外を言わないでと、そう縋っているかのように見えてしまう。
「そうですね俺は______」
BGMは再開され、先程より少しだけ明るいジャズが流れる。
俺の答えを聞いて、彼女の
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作者名:言ノ葉 x他1人 | 作成日時:2017年11月20日 0時