私が恋をしたのは……【3】 (ページ49)

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ホクト様がすっと木々に覆われた森を指さす。

ホクト「……ついて来られる？」

「もちろんです…っ、馬を乗りこなすのは得意なので」

「それにタイガのピンチなのに弱音なんて
吐いていられませんから……！」

ホクト「……変な女。いくよ」

鬱蒼と生える木々に視界を遮られながら
必死に馬を走らせていくと、前を行くホクト様が
速度を緩める。

そして、私の方を振り返り静かにしろ、
と言うように人差し指を唇に添えた。

馬を止めホクト様の視線を辿ると、
木々の隙間から見えたのは___

……タイガ！

そこにはたった1人で、300人ほどのオブジェクトの
人間たちと向き合う姿があった。

……よかった、生きてた。……本当に、
本当によかった……っ。

すぐにでも駆けつけたい、
だけどその気持ちをぐっと押し殺す。

「…無駄に飛び出して行っても敵を煽るだけだから
隠れてるんですよね？」

ホクト「…そう。ジェシーたちがここに到着するまで
時間を稼がないと俺たちに勝算はない」

ホクト「だからタイガが殺されそうになったら
___動くよ」

頷いて私は震える手をぎゅっと握りしめ、
前方に視線を戻す。

官僚であることを示す紋章をつけた
オブジェクトの人間が侮辱するような視線を向ける。

官僚「おや…。ご自分がどうしてここに招かれたのか
理解されているのですか？」

タイガ「当たり前でしょ。貴国は、いや……お前らは
俺を殺し、駒として使おうと画策している」

タイガ「俺と兵が全員死ねば事実はねじ曲げられるしね。どうせ俺を反逆者にでも仕立てるつもりでしょ？」

タイガ「そして今回の一件を突きつけて
ロードサイドを属国にする……そんなところかな」

正解だ、とでも言わんばかりにいやらしい笑みが
濃くなっていく。

……っ、タイガはオブジェクトのことをずっと
見捨てられるずにいたのにこんな形で裏切られる
なんて

__信じたいと望んでいたものに、手酷く裏切られる。

タイガが今、どんな気持ちで立っているのかを
想像しただけで激しい怒りが身体を包む。

官僚「___そこまで理解されていて1人で
乗り込んでくるとは、死ぬ覚悟がおありということ
でしょうか？」

タイガ「まさか」

タイガ「俺は生きるためにここに残ったんだよ」