私が恋をしたのは……【3】 (ページ35)

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ロードサイドの柔らかい早朝の風が
私たちの髪をさらっていく。

「タイガがオブジェクトに行くことは止められない
それがタイガの意志だし……悔しいけど、
私には止める術がないから」

「っ、だけど離れ離れになる前にこれだけは
伝えさせて」

……1ミリも取りこぼすことなく、
この気持ちが伝わって欲しい。

「タイガは自分じゃない誰かになりたいって
私に言った。あの気持ちは嘘なんかじゃない
でしょ？」

タイガ「君は物忘れの達人なの？
ちゃんと言ったはずだよ、あれは全部嘘だったって」

「下手な嘘はつかないでいいよ
私はタイガの心の奥に隠してきた本心に
気づけなかった大馬鹿だけど……」

「こんなわかりやすい強がりを見逃すほど
鈍感じゃないよ……」

タイガ「……」

「自分じゃない誰かになりたいって思う気持ちは
紛れもない本心だし、消えることはないのかもしれない」

「だけど、そういう気持ちがあったからこそ
私は今目の前にいるタイガに出逢えたんだって思ってる」

タイガ「……どういう、こと？」

「出逢った頃からタイガはいつも自分に
何が足りないんだろうって探して人一倍努力してる人だった」

「周りから何を言われてもぐっと前を向いて
最後には高慢に笑ってみせる人だった」

_____

タイガ「俺は可哀想な王子なんかじゃない。
…誰もが俺を認めなくても、俺だけは俺を認める」

「自分だけが……」

タイガ「そうだよ、世間の声がなんだって言うの
自分の価値を自分で信じてあげなくてどうするのさ」

タイガ「汚れたボロ靴で頭を踏まれようが
必ず上を向いて、自分を信じてどこまでも強くなる」
______

あの日見た濁りのない透明で気高い瞳と
凛とした横顔が、今も心に焼き付いて離れない。

思い返せば、私はあの時……
タイガのことをなんて美しい人なんだろうって
思っていた